Jリーグサポーターの応援スタイルは“愛情系”と“誇り系”
EUROの盛り上がりも最高潮で、TVを前に寝不足で興奮している方も多いだろう。そんな中で、日本のJリーグの話。今や、多くのチームに熱狂的なサポーターが付いているのが当たり前になってが、自分が愛するチームが負けたときや降格したときの反応は、各チームや試合ごとにさまざまな特徴があるようだ。サッカーのサポーターといえば、フーリガンと言われ、怖いイメージもあるが実際のスタジアムではどのようなことが起きているのだろうか?
【愛情深いサポーターたち】
●ベガルタ仙台サポーター
2008年12月13日。磐田対仙台(ヤマハスタジアム)。この試合は当時行われていたJ1・J2の入れ替え戦。1戦目は1-1のドロー。2戦目の結果は磐田が2点を先制し、後半ロスタイムに仙台がFKで1点を返し、仙台がもう1点を決めればアウェーゴールルールで仙台の逆転勝利でJ1の昇格が決まるといった展開だったが、激戦の末、磐田が逃げ切った。J1昇格を後一歩のところで逃した仙台サポーターだが試合終了後すかさず「ベガルタ仙台!!」というチームコール。その後、激戦を称えた両チームのサポーター同士でエールの交換も行われ、非常に感動的な試合となった。
●コンサドーレ札幌サポーター
2012年5月19日、鹿島対札幌(カシマスタジアム)。札幌は0-7で大敗を喫した。普通なら、応援が止んでしまってもおかしくない状況だが、札幌サポーターたちは、何点取られても応援を辞めなかった。試合終了後も、札幌サポーターたちはチームを鼓舞する声援を送り続けた。その光景をスタジアムやテレビで見ていた人々からは、ツイッターなどを中心に、札幌サポーターへの称賛が多くみられた。とある札幌サポーターは試合後、ツイッターで「(選手たちには)一緒に戦っていることを伝えることしか出来ないですから」とコメント。J1に昇格したばかりで、大量の怪我人を抱え、潤沢な資金があるわけでもない、札幌のサポーターたちの愛情は、例え大敗しても揺るがないようだ。
●鹿島アントラーズサポーター
2012年シーズン、クラブの伝説的選手であるジョルジーニョを新監督に迎えた鹿島だが、現在13位と成績は芳しくない。しかし、2012年4月7日の浦和戦(カシマスタジアム)。鹿島はホームで1-3と逆転負けを喫した。その後、鹿島サポーターからは罵声やブーイングではなく「ジョルジーニョ」コールが沸き上がった。「今シーズンは我慢の年だと思っている。監督を信じていると伝えたかった」過去には、選手やクラブと何度も衝突を起こし、過激派として知られる鹿島サポーターだが、チームの黄金期を支えたジョルジーニョ監督への愛情と信頼は今でも厚いことを伺わせる出来事だった。
【誇り高きサポーターたち】
●浦和レッズサポーター
日本を代表する熱いサポーター集団。 2012年4月21日の大宮戦(NACK5スタジアム)。どちらのチームも絶対に負けられない“埼玉ダービー”に、0-2で敗れたから、さあ大変。試合後、浦和サポーターら約100人が駐車場の出口で立ち往生し、選手たちに猛抗議。バスから降りてきた、ペトロビッチ監督や主将の阿部が何とかなだめて、40分後に解散した。誇り高きサポーター軍団は、納得のいかない敗北にはとことん厳しいらしい。
●名古屋グランパスサポーター
こちらもバス囲みの話。2012年5月19日の仙台戦(ユアテックスタジアム)。2010年のリーグチャンピオンで、今年も優勝候補筆頭に上げられている名古屋だが怪我人やACLとの並行で中々リーグ戦での調子が上がらない。そこに追い討ちをかけるように、0-4での大敗。とうとうサポーターの堪忍袋の尾が切れ、競技場出入り口を封鎖。「優勝争いする気はあるのか」との怒号が飛んだ。
●東京ヴェルディサポーター
東京ヴェルディ(旧チーム名、ヴェルディ川崎)といえば、日本リーグ時代から日本サッカー界に燦然と輝くを名門クラブだったが、2005年シーズンにJ2へ降格。その後、2008年シーズンでJ1復帰を果たすが、わずか1シーズンで再びJ2へ降格。2008年12月6日、降格が決まった川崎フロンターレ戦の試合終了後、真冬にも関わらず約7時間もスタジアムに座り込み抗議の姿勢を示し、来シーズンの年間シーズンチケット不買運動などの騒動にも発展した。
同じサポーターでも、状況によってチームへの“愛情表現”はさまざまのようだが、チームに対して“暖かい態度”と“厳しい態度”のどちらで接するのが、チームに好影響を与えているのかは、サポーターの間でも長年議論の分かれるところだ。
しかし、上記で紹介した磐田対仙台戦後、実況を担当した倉敷アナウンサーは
「日本のサッカーはいいですね。ギスギスしたリーグが世界にはあります。だけど、自分たちのJリーグっていうのはこれでいいんじゃないかなと思います。」
とコメントしている。
今後、ヨーロッパや南米のように過激派の集団の集まりになるのか、日本独自の応援スタイルを歩むのか、「100年構想」を掲げるJリーグのサポーターたちの目指すべきスタイルは果たしてどちらなのだろうか? <取材・文/日刊SPA!取材班>
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