批判の声も出ている「株主優待のあり方」
最近、株主優待制度を変更する企業が増え、投資家が振り回されている。優待制度が突然改悪され阿鼻叫喚の投げ売りが起こったり、優待新設の裏に不純な動機が隠れていたり……。優待ブームの一方で廃止も。岐路に立つ株主優待の今後は?【後編】
⇒【中編】赤字で優待を始めて「タコ足優待株」と呼ばれる企業 https://nikkan-spa.jp/347646
バブル崩壊以降、持ち合い解消や海外投資家のポジション縮小などで株価はほぼ一本調子で下げてきた。そこで、個人投資家に長期保有してもらうように、株主優待制度が流行した。今では全上場企業の3割に当たる約1000社が株主優待を実施し、今後も増加するとみられる。
一方で、最近は「優待のあり方に批判の声が出ている」と大神田氏は指摘する。日本市場で6割を占める外国人投資家や機関投資家は優待の積極化に否定的だからだ。
「コメやクオカードを大量にもらっても、使い道がないためです。『公平な利益還元のあり方』という観点から、海外投資家は『株主優待を手厚くするよりも、配当として多く還元すべき』と見直しを迫っている面もあります」(株式ジャーナリスト・大神田貴文氏)
サトーHDやアリアケジャパンが優待廃止とともに配当の積み増しを発表したのが好例だ。個人投資家に喜ばれる優待がはやる一方で、海外勢の顔色を窺って優待を廃止し配当を増やす企業が増えるかもしれない。
【大神田貴文氏】
株式ジャーナリスト。国内大手証券を経て現職。金融・経済政策も強い。個別企業の裏情報も知る事情通
<今年、新設された株主優待の例>
社名:常陽銀行(8333)
株価(株数):405円(1000株)
優待内容:地元特産カタログ2500円相当。次回より3月
社名:山陰合同銀行(8381)
株価(株数):606円(1000株)
優待内容:島根・鳥取両県の特産品カタログ5000円相当。次回より3月
社名:長野銀行(8521)
株価(株数):149円(1000株)
優待内容:優待金利+0.3%
社名:サニーサイドアップ(2180)
株価(株数):937円(100株)
優待内容:billsでスクランブルエッグもしくはリコッタパンケーキ提供
社名:デジタルハーツ(3620)
株価(株数):653円(100株)
優待内容:お米券2㎏分
社名:ダイフク(6383)
株価(株数):523円(500株)
優待内容:ボウリング利用料割引券1000円
社名:日本航空(9201)
株価(株数):3830円(100株)
優待内容:航空運賃50%割引券1枚 長期保有制度あり
社名:小僧寿し(9973)
株価(株数):278円(100株)
優待内容:6月、12月。優待券1000円
社名:マックスバリュ九州(3171)
株価(株数):1161円(100株)
優待内容:1000円で1枚利用できるお買い物券50枚
社名:パピレス(3641)
株価(株数):4650円(100株)
優待内容:レンタルサイトで利用できるチケット1050円
社名:アイネット(9600)
株価(株数):604円(1000株)
優待内容:クオカード1000円。長期保有で増額
社名:コスモス薬品(3349)
株価(株数):8930円(100株)
優待内容:5月、11月にお買い物優待券2000円かお米券4㎏
社名:ニフコ(7988)
株価(株数):1817円(100株)
優待内容:東北地方の産物。初回は岩手県産ジュース
長期的な安定株主として個人投資家を確保しようと、各社が株主優待に積極的。今年だけでも50社以上が株主優待を新設した
取材・文・撮影/SA編集室 横山 薫(本誌)
※株価などのデータは12月6日時点
― 株主優待[改善/改悪]の悲喜こもごも【3】 ―
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