中国の経済はすでに危険水域【倉山満×上念司対談】Vol.2

6月4日に発行された扶桑社新書『嘘だらけの日中近現代史』が早くも大好評となっている。そこで、著者で憲政史学者の倉山満氏と経済評論家の上念司氏が、日中史のタブーについて激論を交わした! ⇒【前回】『中国の歴史サイクルはたったの8つの繰り返し』 ◆中国史のサイクルが変わらないワケ ――本書のなかでも、「中国の歴史は8行の繰り返しだ」と指摘(※前回参照)されていますが、現在の中国は「皇帝側近の跳梁」を経て「秘密結社の乱立と農民反乱の全国化」あたりということになりますよね。 倉山:そうですね。実際に最近、邪教と呼ばれる地下宗教が活発化しているし、全国各地で暴動も起きているでしょう。中華人民共和国の歴代トップを明朝の皇帝で例えるなら、毛沢東は建文帝、鄧小平は永楽帝ということになりますね。習近平は、国政改革に取り組むも、結局先代の悪政による負の遺産を抱えきれずに民衆の反乱に遭い、最後は自害した明朝最後の皇帝、崇禎帝になってしまうんではないでしょうか。はっきり申し上げると、中国史は『三国志演義』の脚本のまま、登場人物の名前と武器だけ変えればそのまま語れちゃうんです。
上念 司

上念 司氏「茶化してあしらうのが正しい中国の対処法です」

上念:民度もまったく変わっていないですよね。アメリカ人外交官のラルフ・タウンゼントが’33年に書いた『暗黒大陸中国の真実』という本があるんですが、その冒頭に上海の船着き場の描写がある。外国船が港に入ると、近くに漂っている薄汚れた船が一斉に寄ってきて、外国船の汚水排出口に柄付きの網を延ばして、そこから出てくる残飯をすくって食料にする場面です。 倉山:それって、今の「下水油(残飯や下水から精製した食用油)」とまったく同じ発想ですよね! 上念:そう。ちなみにタウンゼントは、アメリカは中国と関わらないほうがいいと盛んに提言している。今はその警告を、日本が参考にするべきではないでしょうか。例えば尖閣をめぐる反日デモのあと、中国進出の日本企業が一斉に撤退を考え始めましたよね。でも僕からすると「何を今さら」って話。「そんなリスク、最初から織り込み済みじゃなかったのかよ!」って。 倉山:当時のアメリカ人は今の日本人以上に中国をわかっていなくて、タウンゼントは異端視され、最後は親ナチス呼ばわりされた。それで結局、フランクリン・ルーズベルトは親中派に「毛沢東は国民党的ファシズムにも反対しているだけでコミンテルンと関係ない。実は資本主義だ」と言われて鵜呑みにしちゃった。 上念:アメリカはいまだにやたら中国贔屓のイアン・ブレマーみたいな媚中学者の親中論がまかり通っているから、変わっていない(笑) ――“8行サイクル”でいくと、次はいよいよ「地方軍閥の中央侵入」ということになりますよね? 倉山:大規模な経済危機が起きれば、そうなるでしょうね。実際、人民解放軍の統制は乱れていると聞きますし。 上念:経済はすでに危険水域。中国はリーマンショックあたりで、農村から都市部への人口流入がストップする「ルイスの転換点」を越えた可能性があります。 倉山:日本の’70年代の高度成長モデルが機能しなくなって、景気が悪くなった頃と似ていますね。 上念:そのとおり。リーマンショック直後は地方にカネをぶっ込んで、不動産開発を行って不動産バブルを作って持ちこたえた。ところがインフレがひどくなり始めたので金融引き締めをやって元高を容認しなければならなくなった。しかしそれでは輸出主導が成り立たなくなる。逆にカネを刷りすぎるとインフレに逆戻り。この微妙な均衡が崩壊すれば、これまでにない衝撃が待っていますよ。 ⇒『日本の中国研究者は学閥に縛られて「真実」を書けない』に続く 【倉山満】 くらやまみつる 憲政史研究者、希望日本研究所所長。中央大学文学部史学科卒業、同大学院博士前期課程在学中に国士舘大学日本政教研究所非常勤研究員を務め、日本国憲法を教える。著書に『嘘だらけの日中近現代史』(扶桑社刊)など 【上念司】 じょうねんつかさ 経済評論家。中央大学法学部卒業。日本長期信用銀行、臨海セミナー勤務を経て’07年、勝間和代氏と株式会社「監査と分析」を設立。著書に『「アベノミクス亡国論」のウソ』(イースト・プレス刊)など ― [新説]中国の歴史は8行の繰り返しだった!【2】 ―
嘘だらけの日中近現代史

他の中国史研究者が書けなかった日中史のタブーと中国プロパガンダの嘘を気鋭の憲政史学者・倉山満氏が全暴露!

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