Jリーグ公式サイトより
いよいよ開幕が目前に迫ったJリーグ。昨年は佐藤寿人擁するサンフレッチェ広島が激戦を制し、連覇を飾った。今年はどのチームが優勝するのかとサポーターは胸を高ぶらせていることだろう。しかし、その一方で気になるのは降格チーム。昨年は前田遼一、駒野友一といった日本代表のスター選手が在籍するジュビロ磐田が降格し、話題となった。
「おいおいウチが降格候補だぁ?」と、良識派のサポーター諸兄はお怒りになるかもしれないが、ある意味、優勝争いよりも熱いバトルが繰り広げられるのも事実。崖っぷちに立たされたチームの奮闘は間違いなくJリーグの見所のひとつなのだ。果たして今年はどのチームが降格してしまうのだろうか……。
◆昇格組はどこまで踏みとどまれるか
お叱りを覚悟の上で、最初の降格候補は昇格組。タフなJ2の戦いを制したとはいえ、昨年2部だったのも事実。よほどの補強をしなければ急激な戦力アップは望めないだろう。今年の昇格チームは日本代表の遠藤保仁、今野泰幸が所属するガンバ大阪、横浜Fマリノスからマルキーニョス、名古屋グランパスからDF増川などを補強したヴィッセル神戸、そして昇格プレーオフに俳優の大杉漣が駆けつけたことも話題になった徳島ヴォルティスの3チームだ。この中でも、四国勢初のJ1参戦を果たした徳島は苦戦が予想される。
「プレーオフで激戦を制して昇格を決めたけど、去年はJ2で4位。J1も初めてだから、まずは残留することが第一目標でしょう。昇格時には母体である大塚製薬が大盤振る舞いで補強に乗り出すなんて噂されましたが、蓋を開けてみれば特に目立った補強もないし、他の昇格チームに比べたら厳しいのは明白です。FWの津田も名古屋時代は燻っていたように、J1が舞台だとJ2と同じようなパフォーマンスができるかは未知数。厳しい一年になるでしょうね」(スポーツ紙記者)
だが、過去には同じように降格予想をされたサガン鳥栖が周囲の期待を裏切り、初めてのJ1で5位につけるなどのサプライズもあった。降格候補になってしまうのは仕方ないだろうが、徳島ヴォルティスの奮起に期待したい。
◆今年も名門降格のサプライズが起きる!?
まさかこんな名門が!?と、驚くようなチームが降格してしまうのもJリーグの恐ろしいところ。昨年、磐田が降格したことも記憶に新しいが、過去にもガンバ大阪、FC東京、柏レイソルなどのビッグクラブがまさかのJ2落ちを味わった。今年も波乱は起きるのだろうか?
「横浜Fマリノス辺りは怪しいかも」
と語るのは在京テレビ局のサッカー担当ディレクターだ。
「横浜は補強したけどリーグ戦と平行してACL(アジア・チャンピオンズ・リーグ)も戦わなきゃいけない。おまけにベテランが多いからね。なかなかターンオーバーが効かないんじゃないかな。良くも悪くもこのチームは中村俊輔。もし、中村がケガで長期離脱なんかすると、かなり分が悪くなる。中村の代役として藤本淳吾を名古屋から獲得したけど、藤本は中村のように試合は作れない。また、チーム全体のメンタル的な問題もあると思う。昨年末の“逆転優勝逃し”から始まってゼロックス・スーパーカップ、そしてACLの初戦も0−3で落としている。チームが浮ついているというか、地に足が付いてないというか……このまま引きずってしまうと、ひょっとするとがあるかも」
プレシーズンマッチで不調といえば名古屋グランパスも不安が残る内容だ。万年中位と揶揄されたがストイコビッチ体制下で生まれ変わったのも今や昔。今年は監督も変わり、主力もかなり抜けたことで降格ダービーに名を連ねる危険もあるという。
「西野監督は名将であるとは思いますが、チームが完成するのに時間が掛かることでも有名。降格争いの真っ只中に神戸で指揮を執ったのですが、あっさり解雇の憂き目に遭いました。今年の名古屋は闘莉王を除いた田中隼磨、阿部、増川というDFライン3人を解雇しました。タイでの練習試合では連携面での危うさを露呈し、帰国後はJ2のFC岐阜相手に負け。玉田なんかは強気なコメントを出してますが、3バックから4バックへとここに来て変更するなど、浮き足だった動きが見られます。ただでさえチームが完成するのに時間が掛かる西野監督です。開幕からつまづくと、そのまま……なんてこともありえるんじゃないでしょうか」(地元名古屋のテレビ関係者)
ちなみに当の名古屋サポーターからは「うちの中位力を舐めるな!」という強気な(?)コメントも……。果たして新しいチームをつくりだすための「産みの苦しみ」に耐えられるのか。一方、待ち受けるJ2のサポーターは、「ぜひ有名チームに落ちてほしい!」と熱い視線を注いでいる。
「去年は『遠藤や今野が生で観れる!』と、J2の観客数が激増した『ガンバノミクス』でどこもウハウハでした。こちらからしたらサポーターにお金を落としてもらって助かるし……。生で闘莉王とか楢崎とか久しぶりに見たいです。もう、何年も見てないので……」(ジェフ千葉のサポーター)
◆残留争いの鬼が遂に泣く日が来る!?
最後の降格予想チームは多くの残留争いを経験し、その度に土俵際の強さを見せてきた大宮アルディージャ。一昨年はシーズン途中まで降格間違いなしと言われながら、終盤怒濤の連勝を重ね、J1に踏みとどまった。その勢いはとどまるところを知らず、昨年にはJ1の無敗記録を更新。シーズン中盤までは首位を走った。しかし、主力の怪我に加え、監督が解任されてからはチームの成績も急降下。敗戦を重ねると、シーズン終盤にはまたもや残留争いに巻き込まれ、「降格ラインコントローラー」と揶揄されるハメになってしまった。
「大宮の成績は気になりますよね。うちが残留するためにも、今年は残留ラインを低めにしてほしいです(笑)」
と語るのは新潟のサポーター。今年は新たにFC東京監督、日本代表コーチを歴任した闘将大熊清を監督に迎え、上位争いを狙う大宮。現実的に降格候補なのかと言われれば疑問だが、冗談とも本気ともつかない理由で降格候補に挙げるサポーターは多かった。同様にメディアのサッカー担当も「厳しい」と口を揃える。
「今まで粘り強さを見せてきたから、逆に一度ぐらい落ちるところを見てみたい。Jリーグにはいろんなジンクスがあるけど、それが崩れるのも面白い。大宮が落ちたら、もう何を信じていいのか分からなくなるから恐いよ」(先述のサポーター)
昨シーズンは天国と地獄を見た大宮。「絶対に落ちない」ことで名を馳せてきたチームが落ちるとなればJ1が混乱するのは必至。また、ほかにも降格争いを引っ張るであろうチームはいくつか予想される。記者たちに聞いた。
「神戸は今年も厳しいでしょうね。神戸はここ数年、大型補強はするもののチームが空中分解する傾向が強く、フロントと現場の意思疎通ができていない。まとめ上げればなかなかのチームになると思うんですが……安達監督の手腕には注目したいですね」(先述の在京テレビ局のサッカー担当者)
「意外と危ないのは仙台じゃないでしょうか。堅守を掲げてチーム作りに徹した手倉森監督が抜けたのも大きい。それ以上に最終ラインからDF陣を統率してゲームを作ってきた絶対的守護神のGK林が広島に移籍したことは大きい。今年は移籍市場でGKがものすごく流動的で、三角トレードのように選手が動きましたが、仙台は大卒でGKを一人加入させましたが結果的には抜けたままですからね」(スポーツ紙記者)
「昨年の甲府は下位3チームの成績が悪すぎたこともあってしっかりと残留を決めました。しかし、苦しいチーム事情は今年も同じと思います。ただ、城福監督はさしたる戦力もない状況で残留を決めたように、かなりのやり手です。降格争いというと常連のように甲府の名前が挙がりますが、監督力でなんとか踏ん張るような気がします」(サッカーライター)
これまで降格というシビアな現実に涙をのんできたチームは数しれない。しかし、Jリーグではそこから這い上がり、栄光を掴んだチームも多い。過去には柏レイソルが昇格1年目にしてJ1優勝を成し遂げた。また、サンフレッチェ広島も降格を味わったが、J2でじっくりとチーム力をつけ、今ではJ1連覇を果たしている。香川真司、乾貴士といったスター選手を欧州クラブに送り込み、今シーズンは南アW杯得点王&MVPのディエゴ・フォルランを獲得して注目を集めるセレッソ大阪も降格を経験して地力をつけたチームの一つ。おおよそ優勝チームが限られている欧州のリーグに比べ、何が起きるか分からないのがJリーグの魅力。今年はどんなドラマが待っているのか? ぜひ近くのスタジアムに足を運んでみてほしい。
<取材・文/SPA!降格ダービー取材班>