平井理央の「ランニングを長く続ける秘訣」――東京マラソン、NYCマラソン完走。次なる目標は?
元フジテレビアナウンサーで現在フリーの平井理央が、自身初のエッセイ『楽しく、走る。』(新潮社)を5月30日に上梓した。昨年完走した米NYCマラソンや、挑戦を決めてからの約1年にわたる過程などを綴った一冊だ。「ランニングを始めてみたい、続かない」という人の初めの心構えなど、あれこれ話を聞いた。
――「ランニングを始めたい」と考えている人にとって、まず何をきっかけにすることが大切でしょうか?
平井理央(以下、平井):最初に一人で走るとどうしてもスピードが出すぎてしまうので、ペースを上げ過ぎないことが大切です。例えば、音楽を聴きながら走るとついつい気分がノッて、10分、15分で疲れちゃって「これ以上はもう走れない、自分に走るのは無理だ」と思ってしまう人が多いんじゃないでしょうか。
それだと苦手意識が生まれちゃうので、音楽を聴くにしてもゆったりめの音楽にしてみたり、あとは誰かと一緒に走りながら話せるペースだと無理なく走れるので、まずは誰かを誘って、その人と話しながら走るのはひとつオススメですね。
――誰かと走る、というのは少しハードルが高くないですか?
平井:意外と、周りに走ってみたいと思っている人は多いんじゃないかなと。まだ始めてない潜在的なジョガーの数は増えているはずなので、誘ってみるとノッてくる人は多いんじゃないかなと思います。
――いざ道具を揃えて始めてみても、毎日の仕事で疲れて走れなかったり……継続して走るためにはどんなことを心がければいいでしょうか。
平井:わたしは「ご褒美をつくる」ことをルールにしていますね。例えば、走ったあとに美味しいパンケーキを食べに行こうとか、一番風呂につかろうとか、そのために走る前にお風呂を洗って、お湯をためて、走って帰ってきたらお風呂に飛び込むことを自分のなかでご褒美にしていて。走ったあとには楽しいことが待っている、というマインドセットをつくるためにいろいろ計画を立てました。
そうすると走ることが「面倒くさい」というより「走ったら楽しいことあるかも」と思えるので、自分なりのご褒美をつくるのがいいと思います。同じご飯を食べに行くにしても、走ったあとの最初の一杯は格別ですからね!
――健康のために運動を始めた人には「これだけ頑張ったから、少しくらい」と食べ物に甘えてしまった、という話を聞くことがあります。
平井:「こんなに頑張ったから、これだけ食べちゃえ」というのは、走ることが大変だったり辛かったり、無理をして頑張ってるからその反動が出ちゃうんだと思うんです。でも、走ることが楽しくなるとその発想自体がなくなるはずなので、楽しい気持ちになるように、うまくご褒美をつくることが大切ですね。
――東京マラソンとNYCマラソンのどちらも完走された平井さんにお聞きしたいんですが、雰囲気にはどういう違いがありましたか?
平井:東京とニューヨークでは、まず沿道の雰囲気が違いましたね。東京では、ランナーのことを主役と見て応援していると思うんですけど、ニューヨークでは、応援する自分のことを主役だと思っているんじゃないかってくらい、みんなが楽しそうに参加している空気がありました。
ニューヨークは沿道でバンド演奏をやったり、おじさんのチームが音楽をバンバンかけながら気持ちよさそうにカントリーを歌っていたり、スポーツ観戦のようにお酒を飲みながら声援を送っていたり、応援がアゲアゲなんです。
ゼッケンに名前を書いておくと「Rio, go!Rio!」「You are amazing!」とか、「頑張れ!」というよりも「すごい!よくやってるね!君を誇りに思うよ!」みたいな掛け声が多くて。東京の応援は「頑張れ、頑張れ」って旗を振ったり、本当に声援という感じで礼儀正しくて、それもとても力になったのですが、ニューヨークはフリースタイルでとにかくテンションが上がる応援をしてくれましたね。
――今後の目標にしていることはありますか?
平井:フルマラソンは体になかなかのダメージがあるので、しばらくはハーフマラソンを楽しんでいきたいですね。今は、給水ポイントでワインを飲めるブルゴーニュのハーフマラソンを狙っています。高橋尚子さんが引退後にハマった、ボルドーのメドックマラソンという大会があって、そこでも給水地点でワインを飲めるらしいんです。でも、それはフルマラソンなんですよ。
――ワインを飲みながら走ると酔いが回ってしまいそうです!
平井:それが、意外と酔わないらしくて! でも、メドックマラソンは完走率が世界一低いマラソンって言われてます(笑)。20km付近にある一級のシャトーのワインをみんな目指して走って、それを飲んだらもう適当になるっていう話を聞きました。ハーフなら、ワインを飲んでも楽しく完走できるんじゃないかな?
【平井理央(ひらい りお)】
1982年生まれ。慶應義塾大学卒業後、’05年フジテレビ入社。『すぽると!』キャスター等、スポーツ報道に携わり、’08年北京五輪、’10年バンクーバー五輪等、国際大会の現地中継も担当。’09年に番組内の企画で東京マラソンに出場し、4時間57分22秒で完走。’13年よりフリー。’14年、二度目のフルマラソンとなるNYCマラソンに出場、6時間1分24秒で完走した。著書『楽しく、走る。』(新潮社)が発売中
<取材・文/北村篤裕>
『楽しく、走る。』 無理せずにずっと続けられる、楽しい走り方 |
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