大谷翔平の「てっぺん」を目指す思考――初黒星も「宿題を与えれば成長する」
そして、もう一つ。彼は今、純粋に野球を楽しんでいるように映る。投げて打って、そして走る。野球というスポーツの本質を自らが楽しみながら体現しているのが、大谷だと思う。「楽しさ」を求め、答えなき道を進み続ける彼は言う。
「正解はないと思うんですけど、人は正解を探しに行くんですよね。『これさえやっておけばいい』というのがあれば楽なんでしょうけど、たぶんそれは『ない』と思うので。正解を探しに行きながら、ピッチングも、バッティングもしていたら楽しいことがいっぱいありますからね。そこは両方をやっていてプラスですよね。ピッチングだけをしていたら、ピッチングでしか経験できない発見があるわけですけど、ピッチングをやってバッティングをしていれば、楽しい瞬間はいっぱいあるんです。そういう瞬間が訪れるたびに、僕は投打両方をやっていて『よかったなあ』と思うんじゃないですか」
その言葉は、無邪気に白球を追う「野球少年」の言葉そのものだ。海をわたってもなお、変わらない思いがある。技術の変化を求める一方で、何ら変わることのない純粋な思いを持つ。それこそが、大谷の本質と言えるのかもしれない。
投手として3試合目の登板となった4月18日(日本時間)のボストン・レッドソックス戦では、初回に先頭打者アーチを浴びるなど2回66球を投げて4安打3失点で降板した。もともとは16日(日本時間)の先発予定だったが、悪天候で試合が延期。中6日の登板間隔がずれて調整リズムが崩れたことも、ピッチングに影響しただろうか。球団の公式発表によると、右手のマメが悪化したことが早いイニングでの降板理由だったが、いずれにせよ、投手・大谷の連勝はひとまず止まった。ただ、目の前に立ちはだかる課題を一つ一つ乗り越え、成長し続けるのが大谷翔平というプレイヤーである。
≪宿題を与えれば、勝手に成長する≫
大谷を身近で見守ってきた指導者たちは、口々にそう話す。さらにバージョンアップし、我々の想像を超えた活躍をしていく大谷の姿が、これからもきっと見られるはずだ。
取材・文/佐々木亨
’74年岩手県生まれ。スポーツライター。雑誌編集者を経て独立。著書に『あきらめない街、石巻 その力に俺たちはなる』(ベースボール・マガジン社)、共著に『横浜VSPL学園 松坂大輔と戦った男たちは今』(朝日新聞出版)、『甲子園 歴史を変えた9試合』(小学館)、『甲子園 激闘の記憶』(ベースボール・マガジン社)、『勝利の伝導者』『王者の魂』『あたらしい風』『永遠の刻』(日刊スポーツ出版社)などがある。主に野球をフィールドに活動するなかで、大谷翔平選手の取材を花巻東高校時代の15歳から続ける。
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『道ひらく、海わたる 大谷翔平の素顔』 僕のこれまでが詰まった一冊です。――大谷翔平 |
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