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「ゆるブラック企業」で給料もスキルも上がらず15年、でも辞めない男の絶望

 Plan(計画)Do(実行)Check(検証)Action(改善)。「PDCAサイクルを回す」とはよく言うが、日々新たな問題にぶち当たってはその都度解決策を模索し、堂本さんはより優秀な技術者になる。傍から見れば“成長”のように見えるが……実際はそうではないという。 「そんなかっこいいことではありません。親会社が作ったプログラムの小さなミスを、その場しのぎ的に書き換え続ける。だから、基本的なスキルは身についていても、まったく新しい革新的仕事はできない。この十何年で、新たに身につけたといえることは何もない。新しいことにチャレンジしようと思っても時間も余裕もない。どうやってその日の仕事を終わらせるか、家に早く帰って酒を飲んで寝るか、休日まで耐え抜くか。そんなことばかりです、考えているのは」  とはいえ、なんとなく仕事をこなしていれば生活できるため、辞めたいかと聞かれれば、そうではないという。向上心などとっくの昔に消え去り、いつも気がつけば1年間が終わっている……そのルーティンに収まっているのだ。

「ゆるブラック企業」でルーティンをこなす毎日

 給与も上がらず、そして新たなスキルも身につかず、そもそもそんな精神的余裕も時間もない。となれば、堂本さんのように目の前の仕事をただたださばき続け、家に帰って酒を飲んで寝る、という単調な生活に陥ってしまうのも理解できなくはない。  ネット上では、堂本さんの勤務するような会社は「ゆるブラック企業」とも呼ばれているが、みなさんが置かれた環境、職場はどうだろうか? かくいう筆者も、何のスキルもなく、ただただ聞きかじったことを原稿にして日銭を稼ぐだけの生活に陥っている……気がしてならないのだが。<取材・文/森原ドンタコス>
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