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堀ちえみ、舌がんからの生還「カラオケに行ったら奇跡が起きた」

再びステージに立つ日に向けて

 私はみなさんに、何をお返しできるのだろう。やはり、歌を歌うこと……?   舌がんの手術後、病室でテレビを見ていると、あるワイドショーが堀さんのことを取り上げていた。親衛隊の一人が取材を受けている映像が流れ、その人が「歌手なのに、よりによって舌がんだなんて」と涙を流していた。 「私はその様子を見て、胸がぎゅーっと締めつけられるようでした。10代の頃からずっと、40年近く変わらずに私のことを応援してきてくださったみなさんを、絶望させたままにはできません」  ある日、堀さんは次女を誘ってカラオケへ。声は出せるようになったが、歌を歌えるのか、試したかったからだ。
アイドル時代のCD

このところ娘とよく聞いているというアイドル時代のCD(堀ちえみ著『Stage For~』より)

「勇気をふりしぼり、まずは私の代表曲『リ・ボ・ン』から。イントロが流れた瞬間、スイッチが入りました。そして歌い出した私に、次女が大きな声で言ったのです。『お母さん、すごい! 歌えるじゃん!』『声は出ているから、リハビリでもう少し『さしすせそ』を訓練して滑舌をよくしたら、大丈夫だよ』」 「涙が出ました。まさか、こんなに早く歌えるなんて。嬉しくて、『東京Sugar Town』、『夢千秒』、『メルシ・ボク』、『青春の忘れ物』と立て続けに歌ってしまいました。この一件があったから、私は『奇跡は起こせる』と思っているのです」  その後、ボイストレーニングを再開。うまくいかずくじけそうになる時もあるが、再びステージに立って歌うことが本当の意味での復活、再生だ。そう考えて、家でも自主練習に励む日々を送っている。 「しゃべり方はもちろん歌い方も、100%元に戻すことはできません。でも、新しく生まれ変わったのだと思って、諦めずに新たなチャレンジをしていこう」 「口内炎が2週間以上治らなかったら舌がんを疑った方がいい、と実体験をお伝えしていくことが、生かされた私の務めではないか」 「苦しみもつらさも、絶望も諦めも十分、味わいました。そうした経験すべてを『せっかく味わえたのだから』ととらえて生きていこう」  堀さんは今、そう思っている。<文/鈴木裕子 ポートレート撮影/難波雄史>
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Stage For~ 舌がん「ステージ4」から希望のステージへ

堀 ちえみが本書で初めて明かす、苦しみ、葛藤、そして……がんが教えてくれたこと

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