仕事が100本以上消えた…メディア系フリーランスの惨状
コロナショックに列島が襲われる中、フリーランスのメディア関係者から断末魔の声が上がっている。仕事が壊滅的な状況だというのである。著者の周りでも「これじゃ生活できない。かといって職替えしたくても、今は転職どころではない」と窮状を訴える者が続出。一体、現場はどうなっているのか?
芸能系の媒体を主戦場とするフリーライターの大原信明さん(仮名・48歳)は、ライブレポ、会見記事、インタビュー原稿を担当することが多かった。しかし、それらはいずれもコロナ騒動の影響で中止に。「今は、ほぼ無職」とため息交じりに語る。
「同じライターでも、コラムやまとめ系記事を中心に仕事していた人はいいと思うんです。自分の場合は“取材ありき”だったので、タレント側が動かないと仕事が完全になくなってしまう。レコード会社にしても、リリース延期ばかりですからね。リリースがなくなるということは、パブリシティ絡みの記事が作れないということ。特にアイドルは握手会が生命線なのに、こんな時期にCDを出してもリリイベ=握手会をできるわけがない。結果、ますますリリースがなくなり、自分の仕事もなくなるというわけです」
医者や教師と違い、芸能ライターなど世の中になくてもいい存在──。そう指摘されたら、返す言葉もないと大原さんは認める。こういう非常時だからこそ、「職業には明確に貴賤があるのだ」と思い知らされたという。
「地元の仲間から言われることがあるんです。『お前はいいよな。好きなことだけやって』と半ば見下すような感じで。似たようなことは親戚からも言われますね。フリーライターとは言うものの、実質はフリーター……あるいはニートに近い存在なのかもしれません」
今後はどうしていくべきなのか? 25年以上フリーランスで仕事をこなしてきたが、間違いなく今が最大の危機だという。こうなると職を変えることも真剣に考えざるを得ないが、このご時世ゆえに転職活動が難航することは想像に難くない。
フリーランスの立場で高級グルメサイトの編集作業に関わっているのは小倉夏樹さん(仮名・48歳)。しかし、この3週間ほど仕事はまったくしていない。本社から「記事アップは待ってほしい」とストップ指令が出ているのだという。
「すでに完成している“アップ待ち”の記事が自分の担当分だけでも7本、おそらく合計で100本以上はあると思います。考えてみてください。緊急事態宣言を発令して外出するなと政府が言っているのに、『このお店が美味しいですよ~』なんて外出を促すような誘導記事を公開できるわけないじゃないですか(苦笑)。ましてやうちの場合、メインターゲット層は接待やデートで使う人たち。安倍首相の『うちで踊ろう』動画みたいに読者の感情を逆撫ですることになってしまう」
生きるか死ぬかという非常時においては、「せめて美味しいものを食べたい」という声すらかき消されてしまう。「そんな浮ついた気分になること自体、不謹慎!」という世間の同調圧力が働くのである。
「記事公開を待っている間に潰れるお店も出る可能性があるだろうし、季節の料理を紹介するはずが旬が過ぎたというケースもある。店側もこんな時期に取材なんてさせてくれるはずがないですしね。とにかく今は息を潜めるようにして時が経つのを待つしかないというのが飲食業界の共通認識。終息のメドが見えないのが一番つらいところです」
フリーライター(48歳)「ほぼ無職。今はニートに近い存在です」
フリー編集者(43歳)「この非常時に美味い店を紹介する記事って…(苦笑)」
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出版社勤務を経て、フリーのライター/編集者に。エンタメ誌、週刊誌、女性誌、各種Web媒体などで執筆をおこなう。芸能を中心に、貧困や社会問題などの取材も得意としている。著書に『韓流エンタメ日本侵攻戦略』(扶桑社新書)、『アイドルに捧げた青春 アップアップガールズ(仮)の真実』(竹書房)。
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