仕事

「若いのにパソコンができないなんておかしい」と激怒する上司の理不尽さ

面接で「ホームページが作れる」と言ってしまったばかりに…

「入社面接のときに、ホームページ作りが趣味、といったのがすべての間違いでした。入社後は営業部に配属されたのですが、直属の上司から“取引先のホームページを作れ”と命じられて、その後もいろいろと無茶な要求をされました」  こう話すのは、本来であれば社会人3年目を迎えているはずだった神奈川県在住のフリーランスデザイナー・星田エミさん(仮名・20代)。ホームページ作りが趣味、というのは事実だが、ホームページを簡単に作成できるツールを使っての話。  アパレルやカフェを経営している知人の手伝いという形で、おしゃれだが、あらかじめ用意されたテンプレートを使った簡単なつくりのホームページを作成していただけだった。  しかし、上司の頭の中では「ホームページが作れる=ITの専門家=何でもできる」という風に、イメージが独り歩きしてしまっていたようだ。 「要求は次第にエスカレートしていき、会社の悪口がネット掲示板に書かれているのを上司が見つけた際には、投稿者を特定しろだの、ハッキングはできないのか、とまで言われて……。挙げ句の果てには、甥っ子の結婚式用のビデオを編集しろとまで。さすがにしんどくなって会社を辞めました」(星田さん)  なぜか、こうした上司たちの頭の中には「パソコンができる=ITの専門家=何でもできる」というイメージが出来上がっているようだが、パソコンやスマホはあくまでもツール。  車の運転ができるのだから、F1レースにだって参戦できるだろう、というのと同じだ。彼ら自身がIT知識と触れ合うことを拒絶しているためか、理解してくれる可能性はゼロに近い。

決して専門家ではない

 問題は根深そうにも見えるが、若手が悩むロートルの無茶ぶりについて、社内でも問題視されていると話すのは、食品会社の人事部勤務・中田紳一郎さん(仮名・30代)。 「若手はデジタルネイティブ世代で、物心ついた時にはスマホを触っていたという子も多いのですが、だからこそ、ネットやガジェットに詳しいというわけではなく、いちユーザーとして利用する以外のことには疎い。セキュリティへの関心も低く、そのあたりは外部から専門家を招くなどして、勉強会を行っています」(中田さん)  中田さんによれば、デジタルネイティブ世代だからこそ、既存システムやサービスの仕組みについては「あって当然のもの」として知ろうとしない傾向があるという。  先述した車の例と一緒で、我々が生まれた時に車はあったが、運転はできるものの、車を作ることもできなければ、車が動く仕組みを詳細まで把握している人間など、製造者や専門家以外にはいないのである。  こうしたハラスメントを受けた若者に向けて、中田さんがアドバイスをする。 「うちの社内にもそういうロートルはいますが、当然仕事ができる人たちではない。仕事もないのに年功序列で人の上に立ってしまっただけなのですが、仕事がないからそうやっていびっているだけ。若手は気にしないでほしいし、反面教師として参考にしてほしい」(同) <取材・文/森原ドンタコス>
1
2
おすすめ記事