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「新品の靴が痛い!」まず試したい“靴のストレッチ”術。痛みをこらえるのは逆効果

新品の靴に「キュウリ揉み」

mageru003靴と人間の体はシンクロするところがあって、出来立ての靴・店頭に並んでいる新品の靴というのは、人間でたとえると「緊張して硬くなっている」状態です。人間の場合、運動する前には必ずストレッチなどの準備運動をします。靴も同じで、履き下ろす前に曲げたり、全体を「キュウリ揉み」のように指でぐいぐい揉んでマッサージすると、硬さが取れて履き心地がガラッと変わり、自由に動いてくれるようになります。 この「キュウリ揉み」、筆者がはじめて目の当たりにしたのはフランスの某超高級靴店でした。20万円以上する革靴を、客の目の前で容赦なく、しかも入念に曲げてから「はい」と差しだしました。理由を尋ねると、「マッサージしないと靴も壊れるから」。なるほど、と思いました。 新品を故意に型崩れさせるわけなので、クレームや返品になりかねません。日本のお店では決してやってくれないでしょう。革靴によくある、痛みをこらえながら新品を履きならすのは、時間もかかるし、変なところで曲がってかえって寿命を縮めます。自分で買ったものであれば、履き下ろす前に曲げて揉んで、マッサージをするほうが効果的です。 「キュウリ揉み」には、一つ注意点があります。靴の先端とカカトの芯は触ってはいけません。芯はさわると固いのですぐにわかります。ほとんどの場合、強化プラスチックでできているので、砕けたら元には戻りません。しかし何週間か履き続けた結果、どうしても芯が足にあたるという場合には例外もあります。 mageru006メーカー非推奨ですが、とくに先端の芯(先芯)の両端が足指に食い込んで痛いという場合には、端をぐいぐい揉みこんで芯を砕いてしまうという手段もあります。かなりの握力が必要なので、靴を傷つけないようにハンマーの柄などを布でくるむか、ゴムハンマーなどでぐりぐり押しつぶすように砕くのがコツです。

もう一度靴紐を締め直す

最後に、靴紐を買った時のままにして履いている方は、その靴の良さを引き出せていない可能性があります。スニーカーや革靴が合わないという方は、靴紐をしっかり締めなおしてみましょう。わかりやすい例でいえば、ゴルフシューズです。
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ナイキ「エア ズームインフィニティツアー ネクスト%ボア」、2万7170円。写真は公式HPより

今のゴルフシューズはかなりの割合で「靴紐」ではなく「ダイヤル式」が採用されています。靴紐を手で結ぶのではなく、ダイヤルで機械的に巻き上げる仕様になっています。こうすることで、プレー前には毎回、強制的に靴紐を調節するようになっているのです。この締め直しが非常に重要で、その日、その時の時間や体調によって、足のサイズは変わります。大谷翔平がマウンド上で何度も靴紐を結びなおすシーンを御覧になった方も多いでしょう。
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筆者私物。ニューバランスの紐は滑りづらいものにすべて取り替えています

また、靴紐は厄介なことに、メーカーによってはほどけやすいものがあります。スニーカーなら、ニューバランスのかなりのモデルで紐が滑りやすく、縛ってもほどけたり、気がついたら緩んでいることがあります。ほどけにくい靴紐はスポーツ店で500円くらいで売っていますので、思い当たる方は換えてみましょう。それだけで一日の足の疲れ方が変わってきます。 新品の靴をおろしていきなり歩き出すのは、車の免許を取りたての初心者がいきなり高速道路で爆走するようなもの。靴を買うときには、紐・ダイヤルできちんと調節して、買ってからはストレッチ、必要ならばもみほぐしてあげると、靴のパフォーマンスが格段に向上します。結果歩いていても靴が足に食いついてくるので、ネンザなどのケガも防げます。靴自体も長持ちするので、ぜひ覚えておいてください。
こまつ(本名・佐藤靖青〈さとうせいしょう〉)。イギリスのノーサンプトンで靴を学び、20代で靴の設計、30代からリペアの世界へ。現在「全国どこでもシューフィッター」として活動中。YouTube『シューフィッターこまつ 足と靴のスペシャリスト』。靴のブログを毎日書いてます。「毎日靴ブログ@こまつ
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