朝ドラヒロインは成功のお墨付き?
一方、朝ドラのヒロインをやったからといって急に売れたり、その後の成功が約束されたりするわけでもない。七光組、十四光組と同じく、ヒロインを演じた直後は話題性が買われて引っ張りだこになるが、その後は実力が問われる。
最近の朝ドラの主演者たちが放送終了直後に出演した作品とその後を見てみたい。
『
おかえりモネ』(2021年度上期)の
清原果耶(22)はTBS『
ファイトソング』(2022年冬ドラマ)に主演した。朝ドラが終わってから3カ月後だった。朝ドラの主演者たちにとって平均的なペースである。現在はテレビ朝日系『
マイダイアリー』に主演している。
『
カムカムエヴリバディ』の
上白石萌音(26)はまずフジ『
忍者に結婚は難しい』(2023年冬ドラマ) にゲスト出演。今年5月にはテレビ朝日系の単発ドラマ『
霊験お初〜震える岩〜』に主演した。ドラマへの出演機会が少ないのは所属事務所・東宝芸能が本人の身体的負担などを考えているからだろう。この事務所は数多くのドラマに出演させない。
『カムカム』の主演は3人。やはり主演だった
深津絵里(51)は朝ドラ後のドラマ出演がない。こちらはプライベートな理由とされている。同じく主演の
川栄李奈(29)は日本テレビ『
となりのナースエイド」(2024年冬ドラマ)に主演した。
『
ちむどんどん』(2022年度上期)の
黒島結菜(27)はTBS『
クロサギ』(同年秋ドラマ) で準主役級を務めた。黒島は今年7月に
宮沢氷魚(30)との子供を出産したこともあって、この作品以降のドラマ出演はない。
『
舞いあがれ!』(同下期)の
福原遥(26)はTBS『
18/40〜ふたりなら夢も恋も〜』(2023年夏ドラマ)に主演した。9月に終了した日本テレビ『
マル秘の密子さん』にも主演。年明けからはNHK大河ドラマ『
べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』に出演する。
『
らんまん』(2023年上期)の主演・
神木隆之介(31)は9月にテレビ朝日が放送した故・山田太一さん原作の単発ドラマ『
終りに見た街』(9月)で助演した。神木にしては役が小さかったからか特別出演扱いだった。現在はTBSの大型作品『
海に眠るダイヤモンド』に主演している。
『ブギウギ』の趣里はまず9月に終了したTBS『
ブラックペアン シーズン2』で助演。シーズン1から引き続いての登場だったが、朝ドラの主演を務めた後の今回は特別出演扱いだった。そして現在は『モンスター』に主演している。
『
虎に翼』の
伊藤沙莉(30)の次回作が明かされるのはこれから。ほかのヒロインたちと同じく、旬である1年以内の登場になるだろう。『虎に翼』が大ヒット作となり、伊藤の人気もグンと上がったので、主演になるはずだ。
最近の朝ドラ主演組は大半が成功をしている。新人の主演への抜擢がほとんどなくなったせいでもあるだろう。しかし、過去には朝ドラ後もあまり仕事に恵まれず、そのまま引退した人たちがいる。やはりヒロインを務めることと成功はイコールではない。
俳優は才能と努力がモノを言う世界。2世、3世が幅を利かせる政界などより、ずっと公平なのだ。
<文/高堀冬彦>
放送コラムニスト/ジャーナリスト 1964年生まれ。スポーツニッポン新聞の文化部専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」編集次長などを経て2019年に独立。放送批評誌「GALAC」前編集委員