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高校野球のいじめ、しごきは「監督である大人の責任」。日大三の小倉前監督が“某名門校の生徒”に感じた違和感とは

連日熱戦が繰り広げられている第107回全国高等学校野球選手権大会。広島県代表の広陵高校が、部内の暴力事案が発覚したのを機に、1回戦を勝って2回戦にコマを進めながら出場を辞退したのは、周知の通りである。 全国の高校野球ファンにとどまらず、世間を驚かせたこの騒動はまだまだ収束しないままでいるが、「広陵に限らず、全国の多くの野球部で起きていることに違いない」と言い出す人物まで現れた。 だが、「大きな誤解である」と声を大にして言いたい。 「野球部の悪しき慣習を変えるのは、監督である大人の責任なんです」 こう話していたのは、当時、日大三の監督を務めていた小倉全由氏である。現在、侍ジャパンU-18代表の監督を務める同氏であるが、関東一、日大三の監督を通じて実践したことの一つに、「子どもたちの間にはびこっている、間違ったルールにメスを入れる」ことを挙げていた。
小倉全由氏

小倉全由氏 ©小嶋晋介(『高校野球監督論』(双葉社)

「上級生と下級生の仲がいい」ことに驚かれる

筆者が小倉にインタビューを申し込んだのが、2020年12月のこと。このとき東京都町田市にある合宿所内で小倉から長時間にわたって話を聞き、その後、グラウンド上の練習を見学させていただいたのだが、上級生と下級生の垣根がなく、フレンドリーに話し合っている姿が印象的だった。 「『ウチは上級生と下級生の仲がいいんですよ』と話すと、『本当ですか?』って驚く人がいるんです。そうした人たちの話をよくよく聞いてみると、 『自分たちは上級生とは口を聞いてはいけない、厳しい上下関係でいるのが当たり前』という環境で高校野球をやっていました。それだけに、三高さんのように“上級生と下級生が和やかな雰囲気で練習している”のは、衝撃を受けているんです』って言うんですよ。 でもね、上級生と下級生の関係が良好じゃないという野球部は、こうはいきません。よく見ていると、どこかに歪みが生じていることがわかるんですよね」(小倉全由氏、以下同じ)

名門校の生徒を見て、覚えた違和感とは

小倉が日大三の監督を務めていた20年近く前のこと。ある野球名門校と日大三のグラウンドで練習試合を行った。 その名門校は日大三に一泊することが決まっていたのだが、食堂に上級生と下級生が一堂に集合して着席した直後、小倉は違和感を覚えた。 上級生が携帯電話をいじったり、談笑したりするのに対して、下級生である1年生は背筋をピンと伸ばしたまま、目の前を直視したままでいる。このときの1年生のなかには、後にプロ野球で活躍する選手も含まれていた。
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1年後、“有望な1年生”はどうなっていたのか
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スポーツジャーナリスト。高校野球やプロ野球を中心とした取材が多い。雑誌や書籍のほか、「文春オンライン」など多数のネットメディアでも執筆。著書に『コロナに翻弄された甲子園』『オイシックス新潟アルビレックスBCの挑戦』(いずれも双葉社)

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