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サッカー日本代表が「くんづけ」で呼び合うようになったのはいつから?「年齢による上下関係」の崩壊から生まれる“大切な要素”

2026年3月の日本代表英国遠征のスコットランドでの練習時に、欧州クラブと日本代表の違いについて「日本のほうが味方選手へのリスペクトが少しあるくらい」と答えていた伊東純也にさりげなく聞いてみた。 「むしろ日本代表のほうが、チーム全体で欧州っぽくなっている。そういうことを感じることはありますか?」 「うーん、ないと思います」 それはそうだと思う。現役の選手とすれば、その時代の日本代表でプレーしているわけで、時代の移り変わりに気づくということは難しいだろう。英国遠征時点で33歳とチーム最年長、2017年からA代表で過ごす存在とて気づかないのであれば、チーム全体がそうだとも言える。選手たちが気づくとすれば、「日本らしさ」のほうだろう。 「欧州化」とは、外から長年見ている存在だからこそ気づくものでもある。 ※本記事は、『なぜ日本サッカーは強くなったのか “神とサッカー”から紐解く日本代表の欧州化』(徳間書店)より適宜抜粋したものです。
香川真司

2008年キリン杯 日本対UAEでの香川真司 ©産経新聞

香川真司から始まった「先輩・後輩」の希薄化

現在の日本代表のトレーニングや取材エリアでの様子を眺めても、欧州化がパッと見てわかるのは「先輩後輩の関係がずいぶん減っている」ということくらいだ。 同じ日本代表英国遠征では、25歳の佐野海舟(マインツ=ドイツ)が記者団に対して、29歳の鎌田大地(クリスタル・パレス=イングランド)についてこんな表現をしていた。 「(試合では)大地くんがバランスを見てくれる面もあると思うので、自分が(攻撃に)行ける場面では迫力をもって行きたいです」 選手が、“先輩”に対して「さんづけ」ではなく「くんづけ」で呼んでいるのだ。しかも日本的感覚でいえば、佐野にとっての鎌田は「前回のワールドカップも経験している大先輩」のはずなのに、だ。 これは2008年頃に日本代表入りした香川真司から始まったものだという説がある。ジャーナリストの元川悦子は2019年当時の「アットダイム」の記事で〈Jリーグの下部組織育ちの選手たちの影響ではないか〉と指摘している。 部活よりも上下関係がゆるやか。また当時日本代表入りしていた宇佐美貴史のような存在は、ガンバ大阪の下部組織で中学生時代から飛び級をしていたから、年齢にこだわりすぎることはむしろ不利だったとの意見もある。さらに元川は、当時部活出身(青森山田高)だった柴崎岳(鹿島アントラーズ)は「さんづけをしていた」とも証言している。 香川真司の時代から、この流れが途絶えていない点だけでも「欧州化」の現れだと言える。そしてこの流れは続いていくだろう。選手たちにとっては「過去に部活にいたか、クラブチームにいたか」より、「いまどこにいるか(つまりは欧州のクラブにいる)」事実のほうが大きいはずだからだ。 サッカー選手でなくともそうだろう。20代になって中高時代の友人とどれほど連絡を取っているだろうか? 今、かかわり合いのある人のほうがよっぽど濃い影響力をもつのではないか。

年齢による上下関係の崩壊から生まれる能動性と「個」の確立

そして、この「先輩・後輩の関係が弱まる」ことが、日本代表の「欧州化」にとって絶大な影響力をもつ。欧州化とは、次のような過程で進むものだと筆者は見ているからだ。 1.ピッチ上では年齢による上下関係(先輩・後輩)ではなく個人能力に対するリスペクトが重要視される 2.年齢やキャリア、入団年次に関係なく、チームの勝利という目標のために自己主張ができる 3.チームの構成員として責任をもち、能動的にチームづくりに関わる 4.練習時から高いインテンシティを発揮し、トレーニングの質を上げることができる 5.自分のプレーエリアは基本的に自分で責任を持つ、という考え。カバーリングに依存しすぎない 6.弱点を補うくらいなら「長所を最大限に伸ばせ」という考え このうち、もっとも大切な要素は1と2だ。年齢による上下関係がなくなっていくことで、より能動的なチームへの関与といった姿勢や、練習時からの高いインテンシティなどへつながっていく。 ただし、主張というのは利己的なものではなく、チームの勝利という公の目標に沿ったものでなければならない。そこの分別がついていることも「欧州化」の条件だ。もちろん、先輩・後輩の関係がなくなるからといって、ピッチ外でのリスペクトが消え、ただ若者がオラつくということではない。同業者としてのスキル・実績に対してのリスペクトは消えない。 今年3月の日本代表欧州遠征では、新顔のFWである後藤啓介(シントトロイデン=ベルギー)が「チーム内ではまだまだ話を振られて初めて話すキャラクター」と“自称”したうえで、こんな話をしていた。 「いやあ、練習で何気にベンチに座って靴紐を結んでいる顔ぶれを見ても、すごい人たちばかりなので……」
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比較文化論で導く、日本代表の新たな強さ
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1974年、北九州市生まれ。大阪外国語大学(現大阪大学外国語学部)朝鮮語科卒。『Number』『週刊サッカーマガジン』で連載を始め、1997 年に韓国、2005 年にドイツで暮らした。日韓欧の比較で見える「日本とは何か?」を描く。著書に『メッシと滅私』(集英社新書)、翻訳書に『パク・チソン自伝 名もなき挑戦: 世界最高峰にたどり着けた理由』(小学館集英社プロダクション)、『ホン・ミョンボ』(実業之日本社)などのほか、教育関連書、北朝鮮関連翻訳本などを手掛ける。

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