思惑株で儲ける人は「好材料」の先を見る。億超え投資家が注目する“次の材料”
日銀の利上げ、為替相場の状況、企業業績の変化など刻一刻と状況が変化している。そんななかでも株式市場は「思惑」でも動いている。「思惑で動く銘柄は大別して2段階あり、それぞれに状況が違うからこそ見るポイントも違う」と話すのは、資産億超えの個人投資家、結喜たろう氏だ。株式市場のなかで、現在思惑で動いているのはどんな銘柄なのか。実際に銘柄を踏まえて億超え投資家が解説する。

資産億超えの個人投資家の結喜たろう氏。株式や為替を20年以上取引し、リーマン・ショックやアベノミクス相場も乗りこなしてきた。その投資手法は、市場にとって話題になる大きなテーマから銘柄を絞り込み、決算発表から好業績が見込まれる株を売買するという至極堅実な方法だ。
そんな結喜氏は現在の株式市場においては「思惑相場」にも注目しているという。思惑相場とは新しい技術や事業、国策、企業間の連携などをきっかけに業績には表れていない会社の株価が大きく動くことをいう。
「思惑相場」と聞くと「根拠のない期待のみで株価が上がる」と少し悪い印象を持つ人もいるかも知れない。とはいえ、そもそも株価は将来の企業価値を先回りして動くものである。
「私は思惑相場には2段階があると考えています。一つは『物語への思惑』です。例えば、企業が『新しい技術を開発した』『巨大市場に参入』『国策分野へ進出』『海外展開を始める』といった発表をしたとします。その時点では、具体的にいくらの売上があるか、どれだけ利益が出るかは分かりません。それでも期待は膨らみ、『この事業はかなり大きくなるのでは?』と市場が判断すれば、先に株価が動くことは珍しくありません」
そして、実際に企業が発表した新しい物語を受けて、市場側は「その物語は本当に実現するのか?」を確認しながら思惑のフェーズへ移っていくという。
「物語が現実化すると思惑の中身は変わっていきます。『新技術が実際に採用された』『商品が販売された』『契約が成立した』『量産が始まった』とフェーズが変われば、当然市場の関心は『いくら売れるのか?』『どれくらいの利益になるのか?』『何年後にどの程度の事業になるのか?』が焦点になります。私はこれを『数字への思惑』と考えています」
物語への思惑は「本当に実現するのか?」が問われる。一方で、『数字への思惑』は「実現したらいくらの事業になるのか?」を確認すると結喜氏はいう。思惑相場ではこの違いを履き違えないことが大事なのだとか。
前述の「物語への思惑」の一例として結喜氏が挙げるのは、電波を用いてICタグを非接触で読み取るRFIDリーダーのアスタリスク(東G・6522)だ。

画像はイメージです
株価が下がったときはチャンスか否か!?
「アスタリスクはRFID以外にも、バーコードや画像認識など『モノを認識する技術』を用いた製品やサービスを展開しています。2026年夏にはスーパーの商品すべてにRFIDタグをつけて会計だけでなく、在庫管理なども省人化する構想を発表しました。さらには米国市場への進出や飲食店への横展開など事業構想を次々に打ち出しています」
このアスタリスクの発表だけを見るとスーパーの省人化はかなり大きな市場の創出が予想される。人手不足が叫ばれる昨今ではよりなおさらである。
「しかし、8月31日にアスタリスクは2026年8月期の業績予想を大幅に下方修正しました。売上高予想は22.91億円から14.50億円へ。営業利益は1.17億円の黒字予想から、1.85億円の赤字予想へ変わっています。下方修正の主な理由は米国子会社の大型案件と国内の大型案件が次期以降へずれ込んだり、研究開発費や人件費の費用負担であったりしました」
下方修正を受けて株価は大きく下落した。ただ結喜氏は「事業の物語、そのものが消えたわけではない」と言う。
「今回の下落は、思惑相場を考える上ではむしろ面白いと思っています。それは、株価がいったん下落してリセットされたから。しかも、主因は大型案件の期ずれで、思惑の物語そのものが終わったわけではありません。今後、それが実際の売上として確認されれば、再び期待が生まれる可能性もあります」

市場にとって魅力的な物語があるのと、実際にその物語が本当に売上や利益などの数字に変わるかは別物であると氏は指摘する。「下方修正したから失敗」と判断するのではなく、いったん期待が剥落したあと、この物語が本当に業績の数字として表れ、再び市場から評価されるのか。今後の推移を確認していくべきタイミングというわけだ。
もう一つ結喜氏が、「思惑相場の面白い例」として挙げるのは、Terra Drone(東G・278A)である。
「Terra Droneは2026年3月に防衛装備品への本格参入を発表し、5月には防衛装備庁から国産モジュール型UAVを300式約1.15億円で初めて受注しています。そして、7月には迎撃ドローンの『Terra B1』が防衛装備庁の実証機種に選定されました。さらに、8月25日に『Terra B1』の量産調達契約を締結したと発表しています」

Terra Droneは物語の思惑から数字の思惑へ変わったというわけだ。ただ、量産契約が成立したからと言って株価が上がると決まったわけではない。
「ポイントはこの事業をどこまで数字で説明できるかです。Terra Droneは9月14日に決算説明と防衛事業戦略発表会を予定しています。ここで、量産契約の内訳や来期以降の業績への寄与やロードマップがどこまで示されるか。どんな材料が出るか注目です」
思惑相場では何が今期待されているのかを見ることが重要だと氏は改めて指摘する。「物語」なのか、それともその先の「数字」なのか。その違いを考えることで、思惑株への見方も変わるのではないだろうか。
<構成/上野智(まてい社)>
個人投資家・一級建築士/工学修士 建築設計事務所勤務を経て独立。 空間建築デザイン業務と並行しながら、個別株を中心に資産運用を実践。不況により事業が厳しい状況に追い込まれる中、趣味で続けていた投資が経営の立て直しに大きく貢献し、億トレーダーの仲間入りを果たす。個人投資家グループや証券会社などからの講演依頼も多く、四半期成長率を重視した銘柄選定と、チャート分析に基づく論理的な売買手法に定評がある。著書『四半期成長率とチャート分析』(パンローリング社刊)は2024年ブルベア大賞を受賞。ラジオNIKKEI『きらめきの発想』準レギュラー。 パンローリング主催『ファクター分析投資スクール』担当講師。
X(旧Twitter):@tarouyuuki0322

アスタリスク(東G・6522)

Terra Drone〈278A〉
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