ケニア人マラソン選手、強さの秘密【後編】

 マラソン世界歴代記録にズラリと名前を連ねるケニアのマラソン選手たち。層の厚さを物語るように、現世界記録(2時間3分38)保持者のパトリック・マカウはロンドン五輪代表から外れた。

 ケニア代表に名前を連ねたのは、世界選手権2連覇中のアベル・キルイ、世界歴代2位の2時間3分42秒を持つウィルソン・キプサング、そして2時間5分3秒のタイムを持つモーゼス・モソップと豪華な布陣が選ばれた。なぜここまでケニア勢が強くなってきたのか? 8月にロンドンで行われる男子マラソンでそのケニア代表選手達に藤原新をはじめとした、日本代表は勝てるのだろうか?

 ケニアの強さの秘訣、そして日本人選手たちの勝機について世界陸上エドモントン大会男子マラソン9位の西田隆維さんに聞いた。


⇒【前編】はこちら http://nikkan-spa.jp/254776

「競技に対するモチベーションも日本とは相当違う感じがしますね。日本では結果を出せばちょっとした報奨金は貰え、結果を残さずとも会社に所属をしていれば一定の収入があります。それなりの部屋にも住む事ができ、車だって購入できます。

 ケニアでは、マラソンで結果を残せば豪邸に住める程のお金持ちになれ、また国の英雄になれる。それをテレビなどを通して多くの人が見て、憧れるという感じです」

 ケニア選手達は、ハングリーな気持ちを持ち、生まれながらの高地トレーニングという自然育成に恵まれ、周りにゴロゴロといる世界を相手にするマラソン選手と日々切磋琢磨しあっているのだ。

 マラソンでの日本人選手の勝機はあるのだろうか?

「いままでは、世界選手権 五輪などペースメーカ(※1)が付かない大会ではスタートからお互いに牽制をしながら集団でレースが進むので、ペースの上下動が激しくリズムの掴みにくい展開でした。その為、先頭集団に喰らい付き我慢して後半まで耐えられれば持ちタイムが速くない日本人選手にもメダル等の勝機はありました。でも、近年の大会を観てわかるように、スタートと同時にケニア、エチオピア勢が自分達でペースを作り1つの集団となって、我慢や根性比べではどうにもならない高速レースと変わってきています。厳しい状況ですね」

 最後に、西田氏は熱く締めくくった。

「今回、実業団に所属しない藤原新選手、または川内(優輝)選手が新しい形でマラソンを賑わしてくれているので、新境地の扉を開いてくれる事に期待したい。ロンドン五輪男子マラソンで日本代表選手がどのような仕掛けをしてくれているのか楽しみです。

 いつの日かくるであろう人類初マラソン2時間切りへ向かって、今日も選手達は己との戦い、またはライバルとの戦いに向けて走り続けています。“練習は嘘をつかない”この言葉は万国共通。どんなに才能を持っていたとしても、トレーニングを積まない事には話にならないのです」

※1:例えば5キロを16分など、一定のペースで走りレースを組み立てる選手。マラソンの世界では「ラビット」とも呼ばれている。ほとんどの国際大会では、25キロ、30キロまでペース通りに走ることを約束事として、事前に選手と契約を結んでいる。ごく稀に、ペースメーカーの選手がゴール、そして時には優勝してしまうケースもあるが……。

<取材・文/NANO編集部
海外サッカーやメジャーリーグのみならず、自転車やテニス、はたまたマラソン大会まで、国内外のスポーツマーケティングに幅広く精通しているクリエイティブ集団。「日刊SPA!」ではメジャー(MLB)・プロ野球(NPB)に関するコラム・速報記事を主に担当。ロンドン五輪の期間には各種競技のレビューをお送りします!

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