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イチローより注目!アメリカンヒーローになった黒田博樹

 辛口で知られるNYポスト紙の8月の主な一面記事をさらってみた。

 並み居るアメリカン・ヒーローと同等の扱いを受けるほどの結果を残している黒田は、今、イチローをさしおいて、最も注目を集める日本男児だ。

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辛口で知られるNYポスト紙の8月の主な1面。アメリカの名だたるスポーツヒーローと肩を並べた、ヤンキースの黒田宏樹

◆強豪レンジャーズ打線を2安打完封の快投!

 過去に1度、メジャー1年目に1安打完封をやってのけた黒田博樹が、14日、強打レンジャーズを相手に2安打完封の快投を見せてくれた。

「ノーヒットということは、5回あたりから観客の歓声で意識しました。それより……。」

 試合後の会見で、黒田は語った。
 
「(7回に初安打を許し)ファンの夢を壊してしまって、申し訳ない。」

 黒田博樹は、男気溢れる、謙虚な日本男児だ。

 断腸の想いで広島カープからメジャー挑戦を決意し、半年が過ぎた2008年7月7日。

 当時、ドジャースの黒田はブレーブス相手にノーヒッターを続けていた。その試合で8回表に黒田から初ヒット(2ベース)を放ち、黒田の夢を打ち砕いたのは、テシェーラ。昨日の試合では、黒田の同僚として3点目のソロアーチをプレゼントした選手だ。

「もちろん(4年前の黒田の完封を)思い出したよ。あの時はたまたま自分はヒットを打てたけど、調子が良い時の黒田には、どんなバッターだってお手上げなんだよ。だから昨日の試合でベンチに戻る打者が皆、首をかしげていただろ。あの気持ちはよく分かったよ(笑)」

 ヤンキースにはさらに2人、4年前の黒田の快投をよく知る選手がいた。昨日も、4年前も、黒田のボールを受けていた捕手のマーティンと、昨日はライト、4年前はセンターで、黒田の好投を支えたA・ジョーンズの2人だ。

「黒田は以前からプレッシャーに強いピッチャーだから、4年前も今日も、こういう結果を出せるんだよ。これからも沢山のスポットライトを浴びるだろうね」

「過去の記録」を調べる記者より早く、正確に、「過去の記憶」を語ってくれるベテラン選手がいる。選手の移籍が活発なメジャーでは、こういう光景をよく目にする。

◆カープとドジャース、忠義を尽くした黒田

 去年の今ごろ、ドジャースに在籍していた黒田は、実はその前月の7月に、優勝を目指す他球団からトレードの申し出を、契約に盛り込まれていた権利を行使して拒否。優勝争いから脱落していたドジャース残留を選んでいた。

「ドジャース一本でやるつもりだったから」とは黒田の弁。

 もともとメジャー挑戦ですら、愛する広島球団とカープファンへの恩義から1年延長したほどの男だ。日本のファンは彼の男気と忠誠に心を打たれる思いだった。

 しかし、地元ロスの番記者たちの、彼の決断への評価は厳しいものだった。

「せっかく優勝を狙えるチームへの移籍というチャンスが目の前にありながら、それに挑戦する勇気に欠ける」、「出て行ってくれればドジャースは有望な若手を交換で手に入れられたのに」等々。

 そしてオフになると黒田はFAとなった。

 日本球界(とくに古巣広島)に復帰の見方が強まるなか、最終的にはヤンキースと1年1000万ドルで契約を結びメジャーに残留。ドジャースの残留オファーを蹴り、FAとなるも、日本復帰に踏み切らずヤンキースと契約したところに、彼の葛藤が見え隠れする。最終的にメジャー残留とした理由を「条件」だけに帰結させるのは早計だろうが、世界一の舞台であるメジャーで活躍中の選手に、いかに古巣広島を愛していようと、日本でプレーすることに高いモチベーションを望むのは、酷な話だ。

 現在までのところ、その葛藤を乗り越えた決断に、黒田は自らの右腕で報いており、シーズン残り1か月半とポストシーズンでも、世界の大都市NYの主役のひとりとして活躍する可能性大だ。

<取材・文/NANO編集部
海外サッカーやメジャーリーグのみならず、自転車やテニス、はたまたマラソン大会まで、国内外のスポーツマーケティングに幅広く精通しているクリエイティブ集団。「日刊SPA!」ではメジャー(MLB)・プロ野球(NPB)に関するコラム・速報記事を担当。

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