【松坂大輔】衝撃の移籍報道の裏側
複数の報道が明らかにしているように、どうやらボストン・レッドソックスは、松坂大輔をウェイバーに公示している模様だ。第一報はこの人。ESPNのインサイドレポートのオルニー記者。
NANO編集部>
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MLBには、クラブ、選手、そしてリーグに至るまで、平等に権利を保つための様々なルールが確立されており、このウェイバー制度もそのひとつだ。
ある球団が、「この選手に興味はありませんか?」と申し出るのがウェイバー公示。これに対して、「ある、ある、興味あります!」と複数の球団が反応した場合は、先に同一リーグ(今回のケースはボストン・レッドソックスが所属するア・リーグ)の球団が優先権を持つ。また、複数球団が名乗り出た場合は、現時点での成績の悪い方が優先される。
ウェイバーに公示された選手が、プレイオフ・ロースター締め切りとなる8月31日までに新球団に移籍した場合は、7月末のトレード期間後であっても、10月からのプレイオフに出場できる権利が与えられる。今季プレイオフ絶望のボストンは、つい先週末もウェイバー経由でローテーション投手を含む、超大型トレードを成立させたばかりなのだ。
◆テキサスに移籍 ダル、松坂のローテーションはあるか?
一方、申請の取り下げが自由にできるウェイバー制度には申請球団のリスクはなく、むしろボストンは「現在の松坂の評価価値を知る」貴重な場として、積極的に活用しているのかもしれない。
また、今回のタイミング(今季初勝利で通算50勝目の直後のウェイバー公示)についても、ウェイバーにかけた上で、松坂に7週間ぶりの先発機会を与えた、と読むのが普通であって、「7回1失点(自責0)の好投で価値が高まるから、ウェイバーにかけた」のは事実と異なるといっていい。
タイミングも重要な要素のひとつだ。今季は地区最下位でどん底のレッドソックスが、例年のようにヤンキースあたりと激しいデットヒートを繰り返していれば、今ごろは逆に、他球団から主力投手をトレードで獲得しているころだろう。そんな時は、松坂のメジャー復帰登板(そして通算50勝)はなかったかもしれない。
6年契約の最終年を迎え、ほどなく来季の契約に焦点が集まる松坂。それを見越したボストンは、「ウェイバーというオープンな市場で他球団の評価を聞き」、来季以降への再契約の検討材料にしていると考えるのが「メジャー通の見方」と言える。
ちなみに。6年前の松坂の大型契約には、ノートレード条項(本人の合意なしでのトレードは不可)が含まれているため、仮に今回のウェイバーで全ての条件が整ったとしても、最後は松坂本人が移籍のYES/NOを決められる。
またメジャーには、「○○選手がウェイバー公示されています」的なアナウンスは一切ない。全ての球団には、いつでも誰でも、自由にウェイバーに掛ける権利があるために、選手自身も知らないうちにウェイバーに掛けられているケースがほとんど。大抵はGM同士のヒソヒソ話で存在する話なのだ。
だから、バレンタイン監督が「そうなの?知らなかった」と答えるのも当然。
我々ファンは、「テキサスに移籍したら、ダルビッシュ、松坂の夢のローテーションがワールドシリーズの舞台で見れるかも!?」なんて夢想するが、それはまさに「夢の話」なのだ。
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