ベビーブーム世代の夢、松井秀喜が残したもの
「私、松井秀喜は、今日、20年間に及びましたプロ野球選手人生に区切りをつけたい……」
年の瀬も押し迫った28日早朝、NYで暮らす松井秀喜(38)が現役引退を発表した。
今や語り草となった、夏の甲子園5打席連続敬遠。巨人、中日、阪神、ダイエー(当時)の4球団競合の末に長嶋監督がくじを引き当て巨人軍入団。93年のプロ入り以来、日米の名門で20年間プレーした生粋のスラッガーは、507本のホームランを放ったダイヤモンドから姿を消す決断を下した。
力強いバットスイングと日本人離れの大きなフォロースルー。松井の凄さを物語るのは、数々のタイトルと共に、多くの球界関係者が口を揃える「松井の打球音だけはモノが違う」というコメントに集約される。ボールが潰れるほど、と比喩されたあの松井独特のバットスイングは、もう見られない。
ベビーブーム真っ盛りの’74年生まれ。今や日本の柱骨を支える40歳前後の働き盛りの同世代は、例え働くフィールドは違えど、松井の活躍にたくさんの刺激やパワーをもらってきた。それだけに松井秀喜の引退は、ベビーブーム世代の青春時代の終焉とも言えるだろう。
過去に2度行われた野球の世界一を決めるWBCに、松井はいずれも不参加だった。『メジャー軍団が本気で挑んでいない大会の優勝はフロックだ』等、時に心ない報道も見られたが、我ら日本の野球ファンの奥底には、誰も口には出さずとも、こんな思いがあったはずだ。『日本は松井抜きで優勝したんだぜ』。
国民誰もが一目を置いていた野球界のジョーカーが静かにダイヤモンドを去った。寒空の今日は、心にぽっかり穴が空いた気分だ。
<取材・文/NANO編集部>
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