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桐生、日本人初の9秒台を出せるか? 陸上日本選手権に注目

「日本人初の9秒台は誰が出すのか!?」  今まで多くのアスリートが挑戦し、辿りついていない100m9秒台。現在の日本記録は伊東浩司(当時:富士通)が1998年に出した10秒00。このときも9秒台は目の前と思われ期待されてきたが、それから約15年の月日が経った。

高校生にして日本人初の9秒台が期待される桐生

 そこに今年、9秒台の走りを生で観られるかもしれないチャンスがやってきた!  6月7日(金)から3日間、東京・味の素スタジアムで行われる第97回日本陸上競技選手権大会で目の当たりにできるかもしれない。  今年4月、京都洛南高校の桐生祥秀が10秒01という世界を驚かすような記録を出し、一躍注目を集め、9秒台への期待が一気に高まった。8月にモスクワで行われる世界陸上の選考会を兼ねるこの大会に選手たちはピークを合わせてくる。そこで、9秒台での可能性と大会の見どころをご紹介しよう。 ◆日本人初の9秒台に期待! 各世代王者の意地がぶつかる男子100  今回出場する選手の中で9秒台、そして優勝争いとなると桐生祥秀(洛南高)、山縣亮太(慶應義塾大)、江里口匡史(大阪ガス)の3人が筆頭だろう。  今年、日本いや世界を騒がせ、現役日本人選手で最も9秒台に近いのが桐生。4月の織田記念で出した10秒01は日本歴代2位。その後も好記録を連発し、高校生という一気に成長する可能性のあるこの時期に9秒台突入ということもおおいに考えられる。ただ、試合数も多く、ピークが少し早いタイミングでやってきたのでそこが気にかかる。  関係者の中で注目されているのが、昨年のロンドン五輪で準決勝まで進んだ山縣。4月に行われた東京六大学対抗で向い風4.7メートルの強風の中10秒47をマークしている。追い風であれば9秒台が出たのではとも言われている。経験もあり、ハイアベレージでパフォーマンスを保てるので、9秒台と優勝の両方を手に入れる可能性は高い。  そして、昨年の日本チャンピオン江里口。追い風参考記録ながら10秒15を出しており、コーチもあの朝原ということで今大会に上手く標準を合わせてくることが考えられる。経験という意味では二人を上回っているので、優勝も考えられる。 ◆熱戦再びか!? 男子棒高跳の頂上決戦  前回大会でロンドン五輪代表をかけて死闘を繰り広げた、澤野大地(富士通)と山本聖途(中京大)の熱戦が再び期待できる棒高跳。昨年は激しい雨の中ジャンプオフ(優勝決定戦)で何度も試技を繰り返し、最終的に5m17を跳んだ山本が優勝とロンドン五輪の切符を手にした。山本は今季世界ランキング9位(※1)5m74を跳んでおり好調にみえる。一方日本記録保持者でこの種目の第一人者でもある澤野は、悔しい思いを胸にリベンジするためにここまでトレーニングを積んできたはず。若さと経験の勝負になりそうだ。  この種目でもう一人注目して欲しい選手がいる。かなりの “イケメン”で、本来は十種競技選手の田中宏昌(モンテローザ)。日本選手権を5連覇するほどの実力者だが、残念ながらケガにより十種競技での出場は果たせなかった。しかし、本人が引退試合と言っているこの大会の棒高跳で素晴らしいパフォーマンスを魅せてくれるはずだ。 ◆村上か? ディーンか? 世界レベルの戦いの男子やり投  もっとも世界レベルでの戦いが繰り広げられるのが男子やり投げ。ベルリン世界陸上で銅メダリストを獲得した村上幸史(スズキ浜松AC)とロンドン五輪代表で決勝に進出したディーン元気(早稲田大)の戦いに注目である。今季自己記録を大幅に更新する85m96(日本歴代2位)を投げている村上。この記録は今季世界3位(※1)で、現時点での調子を見る限りでは一歩リードしている。一方、84m28という自己記録を持つディーンは今季ここまで80m15。他の試合も記録は低調ではあるが、一投の爆発力があるので、何が起こるか分からない目が離せない試合になりそうだ。87m60の日本記録更新にも期待がかかる。 ◆ポスト為末は!? 今や日本人のお家芸 男子400mHは混戦模様  6月5日時点の今季世界ランキングで50位以内に5人、100位まで入れると16人もランキング入りしている男子400mH。今や日本のお家芸と言われるくらい選手層の熱いこの種目において、ポスト為末が望まれている。  昨年のロンドン五輪に出場したのは岸本鷹幸(富士通)、中村明彦(スズキ浜松AC)、今関雄太(渋谷幕張高教)の3名。その中、法政大出身で日本のエースともなりつつある岸本がポスト為末の一番手だろう。ただ優勝争いとなると、今関が今季ここまで日本最高記録を出しており、安定感もある。そして昨年のように嵐のように現れた中村は、先週本業である十種競技において自己ベスト記録で2位となり、好調をキープしていれば優勝争いに絡んでくるはず。それ以外でも優勝や世界陸上代表を狙える選手が多数おり、混戦が予想される。  この他にも、スタート時にクネクネダンスを披露する金丸祐三(大塚製薬)が出場する400mや、箱根選手VS社会人や新旧“山の神”対決がみものの10000m、室伏広治(ミズノ)が出場するハンマー投げなど注目して欲しい種目が多数ある。  ぜひ当日はスタジオまで足を運んでその眼で、アスリートたちの世紀の瞬間を記憶にやきつけて欲しい。  モスクワ世界陸上代表選手選考競技会、第97回日本陸上競技選手権は、以下の予定でNHKにて放送される。 【放送情報】 ●6月7日(金) 総合テレビ(録画) 25:40-26:40 BS1(録画) 19:00-20:50 ●6月8日(土) 総合テレビ(生放送) 16:00-18:00 BS1(録画) 25:00-26:50 ●6月9日(日) 総合テレビ(生放送) 16:00-18:00 BS1(録画) 24:00-25:50 ※世界ランキングは6月5日時点IAAFサイトによるもの <取材・文/NANO編集部> 海外サッカーやメジャーリーグのみならず、自転車やテニス、はたまたマラソン大会まで、国内外のスポーツマーケティングに幅広く精通しているクリエイティブ集団。
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