更新日:2014年10月28日 20:48
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上原は胴上げ投手となれるのか? 数字で見るワールドシリーズ

MLB, レッドソックス, 上原浩治

名実ともに「世界一のクローザー」なるか。ポストシーズンのストライク率はなんと79.1%。タフな試合になるほど本領を発揮する上原浩治

 メジャーリーグのポストシーズンもいよいよ大詰め、残るはワールドシリーズだけだ。今年ワールドシリーズに進出したのは、アメリカン・リーグは上原・田沢両投手が大活躍のボストン・レッドソックス、ナショナル・リーグはかつて田口壮選手が在籍し、2006年にも優勝を遂げているセントルイス・カージナルス。そして2つの古豪の共通点は、チームカラーの赤だけにとどまらない。 ◆レギュラーシーズンの勝率は両軍とも同じ  カージナルスは1882年、レッドソックスは1901年に創立された伝統球団。これまでにカージナルスは18回ワールドシリーズに進出して11回優勝、レッドソックスは11回進出して7度の優勝を遂げている。過去10年間ではカージナルスが全球団中最多の3回ワールドシリーズに進出、2006年と2011年に優勝。レッドソックスは2004年と2007年の2回進出、2度とも優勝しているが、実はその2004年までレッドソックスは86年間優勝から遠ざかっていた(1920年にニューヨーク・ヤンキースに金銭トレードされたベーブ・ルースの呪いと言われていた)。  それがその年のア・リーグ優勝決定シリーズで、レッドソックスは宿敵ヤンキースを0勝3敗から奇跡の大逆転で破り、さらにその勢いで、ワールドシリーズではカージナルスをスウィープ、つまり1敗もせずに破ってしまったのだ。両チームがワールドシリーズで対戦するのはそれ以来のことなので、当時のメンバーはほぼ残ってはいないとはいえ、少なくともカージナルスファンにとっては雪辱を果たすべき対戦と言えるだろう。  数字から両チームの類似点を見てみると、今季レギュラーシーズンの勝率は両軍ともぴったり同じ5割9分9厘(97勝65敗)で、メジャートップ。得失点は指名打者制のないナショナル・リーグのカージナルスが783得点596失点、レッドソックスは853得点656失点だが、これを1失点あたりの得点率で考えるとカージナルスが1.31、レッドソックスが1.30とほぼ同じ。チーム打率はカージナルスが.269、レッドソックスが.277。チーム防御率はカージナルス3.42、レッドソックス3.79(これは全30チーム中14位なので、プレーオフ進出チームの中ではかなり悪い方だ)。 ◆ポストシーズンの投手力と指名打者制に注目  だがレギュラーシーズンとポストシーズンで大きな差が出るのは、投手力だ。良い投手の少ないチームがポストシーズンに残ることは難しいので、ポストシーズンも後半に行くほど、打つのが難しい投手ばかりになってくる。そこにポストシーズンの緊張感も加わるせいか、地区優勝シリーズ、リーグ優勝シリーズを合わせたポストシーズンのチーム防御率はカージナルスが2.34、レッドソックスが3.05。チーム打率はカージナルス.210、レッドソックス.236(ただし地区優勝シリーズ.286、リーグ優勝シリーズは.202)となっている。  指名打者制のないナ・リーグが全体として防御率ではア・リーグに優り、打率では劣るのは当然のことだが、ワールドシリーズではア・リーグのボストンで行われる第1・2・6・7戦において指名打者制が採用され、セントルイスで行われる第3・4・5戦では指名打者は採用されず、普段打席に立たないア・リーグの投手も打たなければならない。一見ア・リーグ不利に思われるかもしれないが、指名打者というのはやり慣れていないとなかなか順応するのが難しい役割とも言われているし、ア・リーグの投手も結構打撃を楽しんでいたりもする。ちなみに昨年ワールドシリーズでサンフランシスコ・ジャイアンツ(ナ・リーグ)にスウィープされたデトロイト・タイガース(ア・リーグ)の投手は合計3打席無安打無打点、ジャイアンツの投手は合計5打席1安打1打点。タイガースの指名打者は合計7打席で2安打1打点、ジャイアンツの指名打者は合計8打席1安打0打点だった。 ◆レッドソックス優勝へのカギは先発陣  そして、ポストシーズンで重要なカギとなる投手起用法。短期決戦では、投手の交代は早めに行われる。そのためには頼れる中継ぎと、抑え投手が不可欠だ。そこで上原・田沢両投手の活躍が期待されるのはもちろんだが、昨年のジャイアンツを見ると、先発で不調だったティム・リンスカム投手がロング・リリーフに回り、優勝に大きく貢献する、といった例もある。  レッドソックスのポストシーズンの試合で先発したのはクレイ・バックホルツ、ジョン・レスター、ジョン・ラッキー、ジェイク・ピービの4投手で、防御率は4.29。これを、防御率0.84のブルペンが助けているのだ。対するカージナルスの先発はジョー・ケリー、マイケル・ワカ、アダム・ウェインライト、ランス・リンの4投手で防御率2.50、ブルペン防御率は1.61。つまりボストン優勝のためには、先発陣がどこまで頑張れるか、セントルイスの先発陣をどこまで打ち崩せるかがカギになってくる。  日本時間24日の朝9時にレッドソックスの本拠地、ボストンで開幕するワールドシリーズ。第1戦の先発投手はレッドソックスが今季15勝の左腕レスター、カージナルスがリーグ最多タイの19勝を挙げた右腕のウェインライト。上原、田沢の出番はあるか? 熱戦の火蓋が切って落とされる。 <取材・文/NANO編集部> 海外サッカーやメジャーリーグのみならず、自転車やテニス、はたまたマラソン大会まで、国内外のスポーツマーケティングに幅広く精通しているクリエイティブ集団
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