福島の子供たちの被曝が止まらない【後編】 行政の対応を待ちきれず自主的に除染を行う

―[原子力2]―
←(前編) ◆行政の対応を待ちきれず自主的に除染を行う 9月14日に神戸大学の山内知也教授(放射線エネルギー応用科学)が行った福島市渡利地区の調査によると、測定した10か所中、4か所で2μSv/h(地上50cm)を超える地点があったという。これは南相馬市の子供・妊婦の特定避難勧奨地点指定基準を超える数値だ。また、福島市が除染を行った渡利小学校の通学路雨水枡では、地上1cmの線量で22.6μSv/hを記録した。そのほか、除染された側溝でも地上1cmで5.5μSv/hを記録。 山林で囲まれた渡利地区は、周辺土壌が常に流れ込み、放射能が蓄積されてしまう傾向にあるようだ。
保育園「こどものいえ そらまめ」

「こどものいえ そらまめ」での自主的除染に至る経緯をスタッフが絵本に。『やっぺ はぁ! 希望の光』の注文は電:024-522-9551(14時以降)、 メールkodomonoie.soramame@lapis.plala.or.jpまで

そんな渡利地区にある保育園「こどものいえ そらまめ」では、「行政の対応を待ってはいられない」と、児童の保護者や近隣住民が自主的に除染を始めた。園長の門間貞子さんはこう語る。 「子供たちに毎日フィルムバッジを持たせて、被曝量を測らせている。でも、そんなデータを取るよりも、まずは被曝をできるだけ少なくするべきでしょう。子供は実験対象じゃありません」 門間さんら保育園職員と保護者、有志、町内会の除染チーム17人で校庭の表土100m2を除去。その後、福島市が290m2を除去してくれたという。 「子供たちは、泥にまみれて遊べる庭を取り戻しました。でも、今まで通ってきた公園や山には連れていくことができません。在籍児童23人のうち、残っているのは9人。みんな自主避難していきました。福島市の放射線量を下げなければ、人口流出は止まりません」 そこで、福島市は9月27日、渡利地区など放射線量の高い地域を優先して除染する方針を発表。福島市内の約11万戸を対象に、2μSv/h以上の地点を中心に行うという。筆者はそのマスコミ向け会見に出席し、市長および担当者に質問した。その前の対策会議で、「大人も子供も区別せず、同じ基準でやる」と担当者が言っていたのがひっかかったのだ。 「福島の住民の多くは放射線の影響を受けやすい子供の被曝を減らしたいと思っていますが、子供に対して特別な基準や対策などは考えていますか?」と筆者が問うと、市の担当者はこう答えた。 「大人の基準に合わせるのではなく、すべて子供の基準に合わせるということです」 さらに市長は「子供が中心ですよ」とつけ加えた。 その言葉が本当ならば、南相馬市と同じく、2μSv/hを超える場所は特定避難勧奨地点にしてもよいのでは? しかし、行政は「除染はいいけど、避難はダメ」との方針だ。大波地区の住民説明会で、福島市の担当者はこう言っている。 「被曝を避ける手段として、避難では経済が縮小してしまう。市としては積極的に除染を進めたい」 これが市のホンネだ。避難されて住民が流出すると経済的にマイナスだが、除染なら地元業者にお金が落ちる。住民の安全は二の次ということだ。もし市長が「子供が中心」と本当に思うなら、子供のいる家庭の一時避難と除染を同時に行うべきではないだろうか?
瀬戸孝市長

マスコミ向けに記者会見する瀬戸孝市長(右)。筆者の質問に対し、「子供が中心ですよ」と明言した。本当に子供のことを考えているなら、除染だけでなく一時避難をしやすいようにするべきでは?

取材・文/北村土龍 撮影/田中裕司 写真/グリーン・アクション
やっぺ はぁ! 希望の光

「こどものいえ そらまめ」での自主的除染に至る経緯をスタッフが絵本に

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