やはり「おもてなし」が決め手。海外の日本料理店のたゆまぬ努力
「和食」が世界無形遺産に登録されて早一年となる昨今、日本料理の世界進出が勢いづいている。’14年12月8日、海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構)が、シンガポールのジャパンフードタウン事業と、アジア・欧米地域で「博多一風堂」を出店する力の源ホールディングスへ7億~13億円の出資を決定。だが、日本料理店を経営する多くの在外邦人によると、海外、特に欧州における日本料理店は中国・韓国人業者に制圧されているのが現状だという。
確かに海外では、謎の“和食”が幅をきかせている。ほんの一例だけでも、チョコ寿司、マンゴー寿司、チーズ&レーズン入り味噌汁、カチコチに焼かれた「神戸牛」が載ったフランスパンなど日本人からすると狂気のメニューが地球上を席巻しているのだ。
だがそのなかで海外に進出した各日本人業者は、本物の日本食を広める逆襲開始した。
◆「日本人の店は清潔で親切」料理以外の評価も
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現地の事情に対応する細かい努力のおかげか、10年ほど前と比べて日本人経営店が認知されてきた向きもある。ロンドンで日本料理店「Suzu」を経営する佐野牧子氏は「舌が肥えてきたのもあるでしょう。私がお店を始めた8年前と違って、日本食を食べたことのない人はロンドンにはほとんどおらず、真贋の区別がつくようになったようです。今では、初めて来店されるお客様のなかには事前に電話してオーナーが日本人かどうか確認される方もいらっしゃいます」と話す。
また、料理以外にもスポットが当たり始めている。欧州ではここ数年中韓系だけでなく、欧米人が経営する廉価店でも「ろくに掃除をしない」、「床に落とした肉を平気で使う」などの事例が多数発覚しており、単に安いだけの店は信用されなくなっている。スペインの日本食レストラン経営者は語る。
「日本人経営の日本料理店は中韓系よりは割高ですが、雰囲気やサービスも含めた値段であることをこちらでは理解してくれています。そのため多少高めに設定しても、トイレにウォシュレット、綿棒やアロマを置くだけでとても喜ばれます。また、こちらのトイレは男女共用がほとんどなので、当店ではトイレを分けました。下水道からの工事だったので費用はかかりましたが、おかげで女性を中心に多くのリピーターを獲得しました」
こうした「おもてなし」精神は好意的に受け入れられているという。
「日本のカスタマーサービスはこちらでも世界一と言われています。当店でも外国人従業員に『おもてなし』を教育しています」(佐野氏)
そんな彼らの努力に呼応するように、日本企業も海外の日本食料理店との積極的なコラボレーションに乗り出している。佐野氏は昨年の夏、ロンドンのゲームショーで日本のゲーム会社と共同でメニューを開発。ゲーム中に出てくる食事を再現し、好評を博したという。
本物の日本食を広めんとする日本人の頑張りが実を結ぶ日は近いかもしれない。
【佐野牧子氏】
ロンドンの日本料理店「Suzu」オーナー。日本食文化普及活動に努める。著書『寿司スリム』は11か国語に翻訳され欧州で120万部突破
― 世界の[デタラメ日本食ブーム]を食い止めろ!【2】 ―
『Sushi Slim』 英語版 |
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