マンガ解説者・南信長氏が選ぶ“2012年の3冊”は?
年末恒例の『このマンガがすごい!2013』(宝島社)、『THE BEST MANGA 2013 このマンガを読め!』(フリースタイル)という2つのマンガランキングが今年も発表された。『すごい!』のオトコ編1位は『テラフォーマーズ』(作/貴家悠・画/橘賢一)、オンナ編1位は『俺物語!!』(作/河原和音・画/アルコ)、『読め!』の1位は『ぼくらのフンカ祭』(真造圭伍)という結果。両方のベスト10で重複しているのは、『人間仮免中』(卯月妙子)、『銀の匙』(荒川弘)、『式の前日』(穂積)の3作のみとなっている。
「毎年のことですが、同じベスト10でもずいぶん差が出ますね。『すごい!』は<芸能人・評論家・書店員・学生…600人以上のマンガ好き>の投票、『読め!』は<各界のマンガ専門家50名>の投票なので、後者のほうがマニアックなラインナップになる傾向はあります」と言うのは、両誌の投票に参加しているマンガ解説者の南信長氏。
「ランキングそのものよりも、誰が何を選んでいるかに注目して、自分の趣味と合いそうな選者のおすすめ作品を読んでみるのがいいんじゃないでしょうか」
そんな南氏がおすすめする“今年の3冊”は?
「こういうご時世なので、とりあえず元気が出る3冊ということで選んでみました。まずは、山本美希『Sunny Sunny Ann!』(講談社)。気ままな車上生活を送る女・アンと彼女に関わる人々の人生をロードムービー風に描いた作品です。美術系大学院出身の新人らしく、伸び伸びとした描線がとても気持ちいい。どこまでも自由に生きるアンの姿は、一抹の孤独と哀愁をまといつつも、生命力と解放感に満ちています」
続いて挙がったのは、真造圭伍『ぼくらのフンカ祭』(小学館)。『読め!』の1位、『すごい!』でもオトコ編11位に入った作品だ。
「青春マンガの傑作と言っていいでしょう。地方都市の男子高校生2人の友情を軸に、青春のマヌケさと美しさとはかなさを生き生きと描いている。一見すると雑な絵に見えてしまうかもしれませんが、ムダを削ぎ落した躍動感ある描線で、構図やコマ割りもバツグンにうまい。若者の旅立ちの話でもあるので、すごく気分がリフレッシュされます」
そして最後は、円城寺真己『プラスチック・サージェリー』(小学館)。
「これも新人の初単行本ですが、とにかくワケのわからないパワーに圧倒されました。レーザーでホクロを取ってもらうつもりで美容外科に行った女が、気がつくとホクロからレーザーが出るように改造されていた……って設定からしてワケわかんないでしょ? そのレーザーによって街は炎に包まれ、機動隊や特殊部隊が彼女を包囲する。そんな怪獣映画のような構図のなかで、彼女とその恋人の男が痴話ゲンカを繰り広げるという(笑)。バカバカしいけど、ある意味、究極の純愛ドラマと言えなくもない怪作です」
いずれも1巻完結なので、手に取りやすい。年末年始にぜひご一読を! <取材・文/日刊SPA!編集部>
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