全国のキャバクラを渡り歩く男の名刺コレクション
◆夜のネオン街を徹底フィールドワーク「キャバクラ地政学のススメ」
~第1回目 キャバ嬢名刺の奥深さに魅せられて~
銀座のキャバクラ全店制覇をはじめ、全国47都道府県のキャバクラを巡り尽くしてやる! ――ある男の酔狂から始まった夜のネオン街行脚は、やがて街の歴史や風土、文化をうかがい知る壮大なフィールドワークとなった。膨大な数のキャバ嬢名刺をファイリングし、各地の夜遊びフリーペーパーを蒐集する男が提唱する“キャバクラ地政学”の世界。今回は、キャバ嬢の名刺に好事家魂をくすぐられた男が、日本全国キャバクラ巡礼の旅に向かうべく、大地に立つくだりを紹介しよう。
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みなさん、はじめまして。カズと申します。名古屋在住の30代男です。職業は「株式相場師兼キャバクラ・フィールドワーカー」なんて名乗らせてもらっていますが、まあ、要するに単なる“もの好き”です。
これから本稿で述べていく話題の核になるのは、キャバクラ。私が、全国津々浦々のキャバクラを巡るなかで得た経験や知見を、ここでみなさんに紹介してまいります。といっても「こうすればキャバ嬢にモテモテでウハウハ!」というような、表層的刹那的通俗的な斬り口は、ほぼ皆無となるでしょう。
私の視点を大まかに説明するなら「キャバクラ巡りの形を借りた、文化人類学的フィールドワーク」といったところでしょうか。もしくは巡礼の旅(キャバクラお遍路)がイメージ的には近いかもしれません。そうしたフィールドワークの詳細は、次回以降、漸次開陳してまいります。
さて、私がなぜ、全国のキャバクラ巡りをスタートさせたのか。
きっかけは、2011年の3月~9月にかけて、名古屋の繁華街・錦にあるキャバクラを全店制覇したことでした。正直なところ、キャバクラ巡りを始めたことに、大した理由はありません。「ネオン街で営まれているサービス業を、ビジネスの視点から研究してみたい」とか、「そこで繰り広げられている男と女のアレやコレやを垣間見て、人間関係のアヤを解明してみたい」とか、ボンヤリとした目的もないことはなかったのですが、強いていえば「そこにキャバクラがあったから」がいちばんしっくりくる感じです。
最初、キャバクラの何にハマまったかといえば、キャバ嬢たちの名刺でした。嬢名刺は、実に興味深いものです。芸能人と見紛うばかりの“奇跡の一枚”をデカデカと載せた写真メインのもの、デザインや紙にこだわりぬいたクールなテイストのもの、かと思えば保守的な中小企業の営業マンが持つようなジミ~なものなどなど、たかが名刺ひとつにもまざまな個性が溢れているのです。一枚一枚に手書きでメッセージを書き込んでいたり、プリクラを貼っていたりと、嬢たちが独自に工夫を凝らしているのも面白いところでしょう。
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名刺といえば、そこに書かれている源氏名もたいへん趣深い。私が真っ先に感じたのは「どうしてキャバ嬢の源氏名には『さ』と『ら』がここまで頻出するのか」ということでした。たとえばサラサとかサキ、レイラ、ランカなどなど。サラなんて、そのものズバリですよね。そして「綺」「麗」「羅」「華」「沙」あたりの漢字を、たいへんよく目にします。
賢明なる諸兄諸姉はすでにお気づきでしょうが、キャバ嬢の源氏名はいわゆるキラキラネームが多いわけです。そうした傾向があるなかで、嬢によってはあえて古風な源氏名を名乗るコもいます。アキコ、ケイコ、ミチコなど、ちょっと地味でありきたりな印象の源氏名だからこそ、キラキラネームを名乗る他の嬢よりも覚えてもらいやすい――つまりは、他の嬢と差別化がはかれるという具合。キャバ嬢のヘアスタイルよろしく、モリモリに盛りまくった押し出しの強い源氏名ではなく、教室のスミで大人しく参考書を読んでいるメガネっ娘(でも、よく見ると顔立ちがかわいくて巨乳)みたいな源氏名で勝負しているわけです。これぞまさしく、源氏名におけるブルーオーシャン戦略。たいへん清々しいのでございます。
こうした名刺のデザイン、源氏名などはそれだけで本が一冊書けるくらい(!?)系統分類・考察が可能でして、深掘りしていくと知的好奇心の海が広大に広がってしまいます。キャバ嬢の名刺は、私の好事家魂に火を付けるのに十分な、素晴らしいコレクターズアイテム。キャバ嬢名刺の奥深さに感銘を受けた私は、それを蒐集するという営みに魅了されていくのです。
そうした中で、私の心にひとつの想いが灯りました。取り憑かれたように名古屋の錦エリアにあるキャバクラを全店制覇した後、それだけではまったく満足できない自分に気付きます。幼いころから、全種類揃えたり、全部見たりすることが大好き。私にとって「完全制覇(コンプリート)」は人生のテーマでもありました。しかし、大人になってからこのかた、さまざまな領域で完全制覇を実現できずにいたことも事実。
これは絶好機ではないだろうか……そう直感した私は、決意したのです。「次は、日本一の歓楽街・銀座のキャバクラを完全制覇だ! そして、名刺コレクションをさらに充実させるのだ!!」と
<構成/漆原直行>
【カズ】
名古屋在住の30代中盤男性。株式投資を生業にするかたわら、キャバクラで繰り広げられる人間模様の面白さに惹かれ通い始める。2011年に名古屋の繁華街・錦のキャバクラ全店制覇、2012年に銀座のキャバクラ全店制覇を達成。そして2013年には、都道府県すべてに出向き、すべての土地でキャバクラ遊びを果たす。今後は、キャバクラだけでなく、昭和の香り漂うキャバレーや、ローカル線でしか行けないような地方の小さなスナックにも寄りながら、鉄道を駆使して全国を巡るという(自身の提唱する)「キャバ鉄」活動にも注力。並行して、日本全国のキャバクラを全店制覇も目指す。
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