学習指導要領って何?【第3回】――教育基本法の全面改正と脱ゆとり教育

小中高の学習指導要領

ようやく経験主義教育と系統主義教育の両者のバランスが取れた内容に

 こうして、極端なまでに行き過ぎたゆとり教育の弊害は、『分数ができない大学生』という深刻な学力低下を招きました。また、個性のみが強調される中で、公共の精神が極端に忘れ去られ、こうした反省に立って2006(平成18)年12月に教育基本法が約60年ぶりに全面改正されました。  教育基本法は教育界の最高法規であり、この条文を具体化するために2008(平成20)年、学習指導要領も大幅に改訂されました。ここから現在進行中の第4期の「脱ゆとり教育の20年(?)」の初めの10年に該当する(A)が始まりました(本連載第1回目の一覧表参照)。
学習指導要領の改訂とその変遷

学習指導要領の改訂とその変遷(クリックで拡大)

   「活動あって学習なし」といわれた総合的な学習の削減や授業時数の増加など、戦後の学習指導要領の中でも、ようやくにして経験主義教育と系統主義教育の両者のバランスが取れた内容になったと評価できます。  また、2015年に学習指導要領が一部改正(改訂)され、それまで教科外の特設時間であった「道徳の時間」が「特別の教科 道徳」として教科化され、教科書が使用されることになった点も評価に値します。

学習指導要領の改訂と教科書が出来るまで

 ここで教科書の話が出たので、学習指導要領の改訂と教科書が出来るまでの流れを説明しましょう。  上記の道徳を例にしてみます。これまで道徳は、教科外の特設時間であったために、いくつかの出版社が発行する副読本はありましたが教科書は存在せず、また、系統だった授業が行われてこなかった実態があります。  そこで、教科化されることになり、教科書が必要になります。  中学校の道徳教科書を例にすると、2015年3月の学習指導要領の一部改正(改訂)が行われ、これを受け教科書出版社は2年間かけて編集を行い、文部科学省はその「申請図書」を1年かけて検定します。ここまでで3年間かかります(2018年3月)。そして、各地の教育委員会などで採択され(2018年8月末まで)、翌年の2019年4月から中学校で使用開始されます。  つまり、教科書の編集⇒検定⇒採択⇒使用開始までは、このように4年間のサイクルで行われるのが通例です。  小学校の場合は、このサイクルが中学校より1年ずつ前に行われるのが原則であり、小学校の道徳教科書は、2018年4月から学校で使用開始されます。  教科書編集は手間暇がかかるため、学習指導要領が改訂されても、すぐにできるという性質ものではありません。  なお、各地の教育委員会などで採択された義務教育の教科書は、4年ごとに採択されるため(無償措置施行令)、教科書を発行する出版社は、おおむね10年ごとの学習指導要領の改訂時期以外にも、教科書の完成度を高めるために4年ごとに内容を改訂し検定を受けています。 (文責=育鵬社編集部M)
おすすめ記事
おすすめ記事