学習指導要領って何?【第4回】――次期指導要領と日本の教育の正念場

文部科学省の看板


「学びの地図」としての学習指導要領


 今年2016年8月に、次期学習指導要領を審議してきた中教審は「審議のまとめ(案)」を公表しました。

 そのポイントは、本連載の第1回目に大きく掲載した「学習指導要領の改訂とその変遷」の一覧表の第4期(B)に列記しています。

学習指導要領の改訂とその変遷

学習指導要領の改訂とその変遷(クリックで拡大)

 
 中教審は年内に次期学習指導要領の答申をまとめ、文部科学大臣は来年3月までに告示し、2020年度から小学校、中学校、高校と、1年ごとに順次実施されていくスケジュールとなります。

 審議のまとめ(案)では、学習指導要領を「学びの地図」としている点が目をひきます。以下、原文を紹介しましょう。

 「学習指導要領が、学校教育を通じて子供たちが身に付けるべき資質・能力や学ぶべき内容、学び方の見通しを示す『学びの地図』として、教職員のみならず、子供自身が学びの意義を自覚する手掛かりとしたり、家庭・地域、民間企業等において幅広く活用したりできるようにすることを目指す」

 これまで学習指導要領は、教員などの教育関係者や、教科書を発行する出版社の人たちが読むものでしたが、児童生徒である子供たちや家庭・地域の人々にも読んでもらいたいとする意気込みが現れており、好感がもてます。

何を学ぶか(What)、どう学ぶか(How)、何ができるか(Do)


 また、次期学習指導要領では、「何を学ぶか(What)、どう学ぶか(How)、何ができるか(Do)」と記しています。(それぞれの英文であるWhat、How、Doは、「審議のまとめ(案)」の原文には記されていませんが、筆者が補いました)。

 それぞれの英文の頭文字、W・H・Dは、教育の原理原則を表しており、相当に練られている印象を持ちます。

 とりわけ、どう学ぶか(How)では、アクティブ・ラーニング(AL)を強調しています。直訳すれば、活動的な学習ですが、中教審は、「主体的・対話的で深い学び」と定義しています。

 これは、第3期のゆとり教育時代にあっては、「活動あって学びなし」と批判された経験主義教育の手法につながるものですが、文部科学省では、ALに関する効果的な授業の実践例を集め、事例集として教員に提供したり、研修会を開き理解を深めていくなど、第3期での失敗を繰り返さないようにする方針です。

 個別の教科に関する詳しい紹介は、ここでは避けますが、国語教育と外国語(英語)教育における言語活動が一層、重視されます。

 国語教育においては、小学校低学年で表れた学力差が、その後の学力差の拡大に大きく影響するとの分析のもと、①学習の質に大きくかかわる語彙量を増やし、語彙力を伸ばす、②文章の構成を深く理解する……指導の充実が挙げられています。

 一方、小学校において、中学年と高学年の外国語(英語)教育が強化され、小学校の授業時間数は、140時間(1単位時間は45分)増えて計5785時間となり、第3期のゆとり教育の(C)で大幅に削減された前の水準に回復する見通しです。

 授業時間数の増加に関しては、土曜日や夏休み、朝の15分程度の学習を組み合わせるなど、学校の判断にゆだねるとしています。創意工夫ができる学校とできない学校との学校間格差が生まれる可能性があり、保護者や地域の理解やバックアップが期待されます。

 本連載で見てきたように、戦後の学習指導要領は、あまりにも振幅が大きかったと言えます。

 次期学習指導要領は、内容的にはよく練られており、これが有効に機能し教育現場に定着するかどうかは大きな課題であり、日本の教育の正念場といえましょう。
 
参考文献:石井昌浩『丸投げされる学校』育鵬社、教育情報誌『虹』(2010年6月1日号)育鵬社

(文責=育鵬社編集部M)
 




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