カネで読み解くビジネスマンのための歴史講座「第4講・ハイパーインフレをどのように収束させたのか?」

レンテンマルク紙幣

レンテンマルク紙幣

 ハイパーインフレはなぜ起きた? バブルは繰り返すのか? 戦争は儲かるのか? 私たちが学生時代の時に歴史を学ぶ際、歴史をカネと結び付けて考えることはほとんどありませんでした。しかし、「世の中はカネで動く」という原理は今も昔も変わりません。歴史をカネという視点で捉え直す! 著作家の宇山卓栄氏がわかりやすく、解説します。

実物資産で保証する


 第1次世界大戦後、ドイツの中央銀行のライヒスバンクは極端な紙幣増刷をおこない、貨幣供給量(マネー・サプライ)を大戦勃発時の1兆倍に増大させ、これに比例して、物価もまた1兆倍となります。1923年、首相となったシュトレーゼマンはハイパーインフレを沈静化させるため、新紙幣レンテンマルクを発行します。

 従来のマルクは「政府の信用」という漠然とした実体のないものに保証されていましたが、レンテンマルクは「ドイツの土地不動産」という実体により保証されたものでした。レンテンとは地代という意味です。仮に、レンテンマルクの価値が下落したとしても、政府が国有の土地資産で弁済する能力を持つことがアピールされました。

 財政基準とそのルールを明確にし、レンテンマルクをドイツの土地資産とペッグ(連動)させ、その資産価値を超える通貨の発行を認めませんでした。レンテンマルクと従来のマルクの交換レートは1:1兆とされました。これは単なる通貨単位を切り下げるだけのデノミネーションではありません。同時に通貨発行量を32億レンテンマルクに制限し、国債引受高も12億レンテンマルクに制限されたのです。

 厳しい通貨発行制限により、レンテンマルクは信用を生み、インフレを収束していきます。

新紙幣をドルとペッグさせる


 1924年、アメリカのチャールズ・ドーズ(後の副大統領)はドイツ経済再建のため、政府委員を組織し、ドル資本のドイツへの大規模注入を行います。ドイツ通貨とドルをペッグ(=連動)させて、安定させるために、臨時的なレンテンマルクを恒久的なライヒスマルクに転換し、ドイツ通貨の価値は保証されていきました。

 ドーズが主導したドル資本注入はドイツ経済をアメリカ資本の傘下に置く狙いもあり、資金を拠出した証券会社などのアメリカ資本は巨額の利益を得ます。

インフレは収束したが…


 ドイツのハイパーインフレはレンテンマルク政策とアメリカの資本支援により、収束し、経済が急速に回復していきます。しかし、1929年に世界恐慌が発生すると、ドイツに投じられていたドル資金が急激に引き揚げられ、ドイツ経済は真っ先に壊滅的な打撃を被りました。アメリカ資本によって支えられていたドイツ経済はアメリカ資本の撤退により、崩壊させられてしまいました。

 ドイツはデフォルトし、暴動が頻発に起こり、大混乱に陥りました。このドイツの混乱を救ったのがアドルフ・ヒトラーです。次回以降は1920年代のアメリカ・バブルと世界恐慌を見ていきます。

【宇山卓栄(うやま・たくえい)】
1975年、大阪生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。予備校の世界史講師出身。現在は著作家、個人投資家。テレビ、ラジオ、雑誌など各メディアで活躍、時事問題を歴史の視点でわかりやすく解説することに定評がある。最新刊は『世界史は99%、経済でつくられる』(育鵬社)。

世界史は99%、経済でつくられる

歴史を「カネ=富」の観点から捉えた、実践的な世界史の通史。

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