果物は敵か味方か[楽しくなければ闘病じゃない:心臓バイパス手術を克服したテレビマンの回想記(第48話)]

バナナ

「キミの本性は野菜なんだって」「そんなばなな……」

果物好きに衝撃のレポート

 若いころから食生活にはそれなりのこだわりがあり、野菜や果物についてはしっかり摂るように心掛けてきた。  中でも果物は欠かしたことがない。春夏秋冬、季節感が味わえるし、自称「自然食派」としては生食出来ることが魅力だった。その意味では果物はなんでもござれの果物オタクに近かった。  退院後もこの方針は揺るがなかった。ところが昨秋、とんでもない書物に出くわした。 『医者が教える食事術―最強の教科書』(牧田善二著)というもので、その中に、さるフィールドワークの結果として「大量の野菜を食べている村は長寿、果物を多くとる村は短命」とあった。  ボクは愕然とした。野菜も食べてはいるが果物は人一倍食べる。果物と野菜で、そんなに寿命に差が出るのか。

野菜と果物の線引きは?

 一体全体、果物と野菜はどう線引きされるのか。  幸いボクの勤め先は理系の研究所。食品料理研究室のT研究員は野菜と果物の違いについて農水省の見解を教えてくれた。行政上、明確な線引きは行い難いようだった。  たしかに、流通の現場では同じウリ科でも、スイカやメロンは果物として扱われているし、キュウリやナスは野菜として扱われている。トマトは微妙だ。フルーツトマトなどもある。  一般に野菜は食用するときに葉、茎、根などそれなりに加工されて副食化されるものとのこと。でも栽培方法はスイカ、メロン、イチゴなどについては、野菜と変わりない。  そこで農水省は「果実的野菜」という分類をしているという。いかにも役所らしいと感心するが、いまいち釈然とはしない。  そこで園芸に詳しいO研究員にも質した。彼は現在は環境問題に取り組んでいるが、学生時代、園芸学を専攻した。そういうわけで学理的な説明をしてくれた。 「野菜は田畑で栽培し、毎年植え付けを行う草本性である。果樹(果物はその果実)は多年生で、収果までに概ね2年以上を要し、果実を食用とする」  彼によると、ピーナツは野菜で、カシューナッツは果物だそうだ。また誰もが果物と考えるバナナは草本性だという。

果物は意識して摂れ

「菜果フォーラム」という冊子の編集を担当するN研究員は、果実喰い短命説について「そんなことはありません」と異議を唱え、専門家の話を聴くべきだということになった。果物好きのボクとしても「短命だぞ」と言われて気持ちがいいものではない。  そこで、中央果実協会の朝倉利員審議官と川口尚需要促進部長を訪ねた。  お二人の話では食生活はバランスが大切で、そのうち果物は「可食部で一日200グラム以上」を摂るべきだと言う。  ミカンでいえば2個、リンゴでいえば1個に相当する。日本人の平均果物摂取量は1日99グラムとのことだから意識して果物を摂るべきとのことだ。 「果物をたくさん食べる村は短命」という説についてはエビデンスがはっきりしないと指摘し、「あんまり気にしないでいいでしょう」という感じであった。  ただ、生食か調理済加工品(例えばイチゴジャム)かを比較すると断然生食がいいという。加熱など調理によってビタミンCが減ってしまったり、逆に余分な糖分が加えられてしまうという。  果物が持つ糖度に関しては、それが1度アップしても摂取カロリーは100グラム当たり4Kcal増える程度だそうだ。  この指摘は嬉しかった。これからは甘い果物をどんどん食べられる。(データは同協会発行「果物と健康」による)  野菜と果物の線引きについては世界保健機関(WHO)では特別分けて考えておらず、「果物と野菜で一日少なくとも400グラム」と言うだけだそうだ。  WHOが言うのだから「果物か野菜か」などというテーマ自体あまり意味を持たないのであろう。 ボクは我田引水の解釈で得心したが、それでも果物か野菜かの線引きにこだわる向きは「千疋屋で売っているのが果物である」というのがボクの結論である。 協力:東京慈恵会医科大学附属病院 【境政郎(さかい・まさお)】 1940年中国大連生まれ。1964年フジテレビジョン入社。1972~80年、商品レポーターとして番組出演。2001年常務取締役、05年エフシージー総合研究所社長、12年同会長、16年同相談役。著者に『テレビショッピング事始め』(扶桑社)、『水野成夫の時代 社会運動の闘士がフジサンケイグループを創るまで』(日本工業新聞社)、『「肥後もっこす」かく戦えり 電通創業者光永星郎と激動期の外相内田康哉の時代』(日本工業新聞社)。
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