更新日:2014年09月12日 17:30

新鮮な魚ほど危険 寄生虫アニサキスの恐怖【後編】

 新鮮な魚介類は美味いというのは定説。確かに獲れたての魚をさばいて刺身で食べると、本当に美味い。だが、皮肉なことに新鮮だからこそ“あたる”こともあるのだ。  昨今、メジャーになりつつあるのが寄生虫のアニサキスである。この寄生虫は主にイカや鯖、鮭に寄生しており、寄生したものを食べてしまうと胃や腸の壁を食い破ろうとして激痛をもたらすのだ。さらにやっかいなのは、アニサキスは新鮮なものにしかおらず、新鮮であればあるほどに“あたる”可能性が高くなってしまうから皮肉なモノである。 ※寄生虫アニサキスの詳細は【前編】にて  では、実際に寄生された食材を食べてしまったらどうなるのか? 筆者テポドンが体験した、悶絶体験を紹介したいと思う。 ●5月某日(土曜日) 22時
寄生虫,アニサキス

テポドンの胃から摘出されたアニサキス。体長は1.5cmほどなのだが、これがまた痛いのなんの。くねってるところが「笑ってるみたいでカワイイ!」と言われたのだが、本人(本虫?)は笑ってるはずもなければ、まったくもってカワイイわけもない。ちなみに、くださいと言ったところ「え? 持って帰るんですか? それはちょっと……」と断られてしまいました

 ライターとの打ち合わせがてらに入った某回転寿司。一杯飲みながら仕事の話をしつつ、注文したのは〆鯖。鯖はこの店の売りでもあり、新鮮な生鯖を使っている。  だが、うっかりして醤油を付け忘れてしまい、調味料を付けずに生魚を食べるのはなんとなく苦手だったので、あまり咀嚼せずに食べてしまった。 ●5月某日(土曜日) 24時  帰宅して横になっていると、なんとなく胃の辺りにむかつきと違和感を感じる。水を飲んでしばらくすると落ち着いたので就寝。 ●5月某日(日曜日) 6時30分  胃の辺りに猛烈な痛みを感じて起床。しかし、下痢や嘔吐はない。以前、編集部に置いてあった夜食のおにぎりで食あたりを経験したこともあり、食あたりならば上から下からの大洪水になることはわかっていたので、食あたりではないと判断。  思い当たる節は一つしかない。寄生虫のアニサキスである。  筆者は釣り好きなので、その辺の寄生虫の知識はある程度知っていたので、症状からしてアニサキスだと直感。  とにかく痛い。驚いた嫁が救急車を呼ぼうとしたので、救急相談センターに電話をして症状を話して近くの病院を紹介してもらうことになった。 ●5月某日(日曜日) 7時  アニサキスだとするなら、内視鏡を使った除去手術が必要になる。そのため、紹介してもらった病院に片っ端から電話をするも、内視鏡を扱える医師や技師が日曜日でいないという理由で断られる。  ようやく見つかった東京女子医大に、タクシーに飛び乗って向かう。  痛みは1分間隔くらいで5~7秒続く。胃の内側から針で刺すような鮮烈な痛みと、胃を絞るような鈍い痛みがダブルで襲ってくる。また、大きく揺れたりするたびに痛む。気を利かせた運転手がスピードを出してくれたんだが、ブレーキを踏んだりカーブで揺れるたびにこちらはフギャとか痛ぇ!と叫ぶ。 ●5月某日(日曜日)8時30分  病院に到着するも医師と技師が来るのは9時過ぎと言われ、それまでに救急担当の医師による問診を受ける。この頃になると痛さは極限に達しており、激痛が走る度に悲鳴をあげるようになり、脂汗がタラタラ流れる。以前、盲腸をやったことがあるのだが、人間、痛みが絶頂に達すると失神しそうになる。今回も断続的な激痛により、意識が段々と遠のいていくのを感じた。  医師による問診では、いろいろな所を手で押していくのだが、これが患部スマッシュヒットしたところで悲鳴をあげて気絶しそうになる。 医師「ここ、痛いですか?」 えいっ! テポドン「フギャ!」 医師「ちょっと我慢してくださいね。ここですよね?」 えいっ! テポドン「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っっ! ぎゃぁ!」 医師「大丈夫ですか?」 テポドン「大丈夫なワケねぇだろ!」 医師「すいません」 医師「痛いですか?」 テポドン「当たり前だろ!」 医師「痛さに強弱や変化ってありますか?」 テポドン「針で刺されるか、包丁で刺されるかくらいの違いです。あ、いてててて!」 医師「じゃあ、鎮痛剤投与しましょうね」  と、漫才のようなやり取りもあり、CTスキャンを撮った結果、胃壁がバンバンに腫れていることからもアニサキスの疑いが濃厚と診断される。 ●5月某日(日曜日) 9時30分  応急処置としてかなり強い鎮痛剤を投与される。 医師「まだ痛いですか?」 テポドン「気持ちイイです」 医師「……」  鎮痛剤の作用で痛みは和らぐも、かなり気持ちよくなってしまった。 ●5月某日(日曜日) 10時30分  医師が到着。アニサキスの疑いが強いとのことで、内視鏡で胃の中を覗いてみると言われる。  鎮痛剤の効果が薄れてきて、体を動かすたびに痛みが出てくるのだが、鎮痛剤のおかげで頭がボーっとして思考と言動が一致しない。一分、一秒でも早く助けてほしいのだが、それをうまく伝えられないもどかしさと痛さの狭間で悶絶する。そして内視鏡手術開始。 ●5月某日(日曜日) 11時30分
内視鏡,アニサキス,寄生虫

これがテポドンの胃壁を食い破ろうとしたアニサキス。白い糸のようなモノが激痛を起こしていたと思うと、憎くてたまらない

 胃壁に刺さっていたアニサキスを1匹除去。  麻酔から覚めた時の爽快感はハッキリ言ってクセになるくらい。とにかくスッキリした感が半端ないのである。ただし、内視鏡で覗いたところ十二指腸に潰瘍も発見されるというオチがついたのであった。  ちなみに治療費は、しめて3万3000円也。随分と高い回転寿司である。後日、電話してアニサキスにやられた旨を寿司店に言ったところ、平身低頭で治療費を全額負担してくれたことは言うまでもない。だが、これはあくまでも飲食店で起きた場合のみである。自分で釣った魚などであたった場合は、もちろんのことながら自己負担になる。  帰宅してからも鎮痛剤、麻酔、胃痛というトリプルパンチのおかげでひたすら寝続ける。その後、2日間ほど胃の腫れがやまず、シクシクとした痛みが続き厄介だったが、それ以上に厄介だったのは筋肉痛だ。  1分おきに激痛が走り、そのたびに腹と背中にギュッと力を入れていたので、なんと翌日から腹筋と背中に筋肉痛が出てしまったのである。一応、週に2度はキックボクシングのジムに通い、筋トレからスパーリングまでこなしているのだが、それでも筋肉痛になってしまったことに驚きを隠せなかった。  新鮮なものほど“あたる”確率が上がるとは、なんとも皮肉なものだ。でも、やっぱり美味しいものの誘惑には勝てないのも事実。これからの時期、海や川など、レジャーで出かけた先で“新鮮な魚”と出会うことも多くなる。 食べるな危険!と言う気は毛頭ないが、筆者の体験談を気にとめておいていただければ幸いである。 <文/テポドン> ― 新鮮な魚ほど危険 寄生虫アニサキスの恐怖(2) ―
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