在中邦人激白「日本のメディアよ、開戦を煽るのはやめてくれ」
3/12発売の週刊SPA!『在中邦人の悲痛な叫び「日中開戦報道は大迷惑」』には『中国嫁日記』がベストセラーになった井上純一氏もコメントを寄せているほか、仮に開戦となった場合、日本側に在中邦人を救う手立てはあるのかなどを検証している。 <文/週刊SPA!編集部>
中国海軍艦艇によるレーダー照射事件が明るみになって以来、週刊誌には物騒な見出しが毎号のように踊る――「中国人9割は『日本と戦争』『東京空爆』」(週刊新潮)「日中開戦『狙いは首都・東京』習近平の中国は本気だ」(週刊現代)。
これを見て、記事を手に取って愛国心や危機感を募らせる人、 無関心を決め込む人、その反応はそれぞれだろう。しかし、中国在住の日本人には、センセーショナリズムに走るこうした日本の中国報道に、命の危険すら感じている者も少なくない。
上海市で自営業を営むNさんは言う。
「軽々しく開戦なんて言わないでほしい。戦争が起きたら、間違いなく私たちが最初の犠牲者になるでしょうからね」
日本のマスコミの「日中開戦」報道は、中国でも反響を呼んでいる。 東莞市在住のある日本人駐在員Mさんはこう話す。
「中国版ツイッターの『微博』では、日本の週刊誌が翻訳されてすぐ出回る。中国メディアも開戦を煽る記事を引用し、すぐに配信する。中国人もこうした報道を見ていることをわかってほしい」
メディアのミスリードによって戦争が勃発した例は、歴史的に枚挙に暇がない。中国事情に詳しいジャーナリストの富坂聰氏は言う。
「太平洋戦争で日本のマスコミは欧米からの侵略の危機を煽り、政府の弱腰を批判しました。結果、軍部の暴走を後押しすることとなった。中国では今、それと同じことが起き得る状況にある。レーダー照射が現場の暴走だったことを見てもわかるとおり、人民解放軍は統制が取れていない。中央政府は戦争を望んでいないが、日中メディアの商業ジャーナリズムによって、最悪の事態に陥ることは否定できません」
もちろん、中国の軍事力の脅威や、尖閣問題に関する中国側の歪んだ主張について、警鐘を鳴らすことはメディアの役割だ。しかし度を越したセンセーショナリズムに偏った報道は、その代償を考える責任があるだろう。
中国には現在14万931人の在留邦人がいる(外務省・平成24年速報版)。しかし、この数字は在留届の受理数に過ぎない。複数の在中邦人の証言によると、届出していない人や長期滞在者などを合わせると、40万規模の邦人がいるというのだ。
「中国は戦争を望んでいる」というような報道もあるが、それは絶対にない。ただ、挑発に弱いのは中国や中国人の弱点。冷静さを欠いた愚かな選択をさせないために、面白半分の報道は慎むべき(35歳・不動産会社経営)
実利実害のない立場の人は、威勢のいいことを言ってもかまわないだろうが、家族とともに中国に住んでいる人の身にもなってほしい。子供が学校で虐められるようなことがないか心配しています(36歳・調査会社経営)
ネトウヨだけが喜ぶ開戦報道で、国を出て働く我々の肩身が狭くなるのは理不尽(35歳・編集)
などなど。開戦を煽るメディアはこれらの人々の声を、在中の40万人にものぼる日本人の命をどう考えているのだろうか。
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