うつ病で使用する休職制度のデメリットとは?
「最近うつっぽい」と感じることや、職場や友人が実際にうつ病になってしまうetc. うつとまったく無縁の生活を送っている人はむしろ珍しい昨今。でも、自分が実際にうつ病になるなんてことはさすがにないはず……と侮ってはいけない。SPA!の読者世代であるアラフォーサラリーマンは、実は最もうつになりやすい世代。うつのさまざまな原因、多様化する職場環境、休職制度の今後まで、我々を取り巻くうつの最前線に迫った!
◆うつの病歴がある人は、生命保険に入れない!?
再発率が高いうつ病の会社員は、休職と復職を繰り返す場合も多い。「解雇の猶予」「休職中も最長1年半の傷病手当金が給料の3分の2、健康保険組合などの保険者から支給される」など、休職制度には“サラリーマンの生活を守る”というメリットが多いためだ。だが、実は休職制度にはデメリットも多いことを忘れてはならない。
「最大のデメリットは、うつ病の履歴があると生命保険に加入できない可能性が高いこと。また、うつ病で休職歴があると経歴に傷がつき、転職活動に影響が出る可能性もあります」とは社会保険労務士の栗本裕司氏。
企業には「採用の自由」があるため、同意を得れば面接相手の精神疾患歴を聞くことができる。嘘をついて、あとで病歴が発覚すると「病歴詐称」とみなされるのだ。
転職せずに元の職場に戻るから平気というわけにもいかない。責任ある仕事は任せづらいという人事の意向で降格になったり、ヒマな部署に異動になったりして、給料・待遇が下がる場合もあるのだ。
さらに、休職制度は、今後うつ病患者にとって厳しい制度に変更されていく傾向にあるという。
「そもそも日本の休職制度は、手術をすればいずれ治る、復帰の見込みが高い肉体的疾患の人に向けてつくられた制度。再発率が高い精神疾患の人の度重なる利用は、“想定外”だったんです」(栗本氏)
精神疾患による休職の増加にともない、傷病手当金の出費がバカにならない昨今。労務不能の社員を抱える金銭的余裕のない企業は、休職制度を含む就業規則全体を厳格化しているという。
「何回まで復職が可能かを就業規則に明文化したり、復職後も、週に○回以上の欠勤が続くと休職中とみなすなど、細かく規定しているのです」(同)
うつ病と診断されても会社に言い出せなくなる時代になる!?
【栗本裕司氏】
’78年生まれ。中央学院大学法学部在学中の’00年、社会保険労務士合格。大手社労士事務所にて約10年間企業の人事労務制度設計・運用に従事。’11年、栗本社労士事務所開設
取材・文/佐藤留美 中村裕一 牧野早菜生(本誌) 撮影/福本邦洋 イラスト/サダ 図版/ミューズグラフィック モデル/池畑暢平
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