ヤクザの追放だけでなく、足を洗った人たちを生かす受け皿が必要
―[元アウトローたちの新生活]―
⇒【前編】「元ヤクザ牧師の下で更生の努力をする元アウトローたち」はこちら
現在は牧師に転身した金沢泰裕さんの下で、更生支援スタッフとなっている額田陽介さん(51歳)も元薬物依存者だ。
「35歳で覚醒剤取締法違反で逮捕され、妻も仕事も名誉も失った。ある日、母親から『こんなキリスト教会がある』と言って連れてこられたのが金沢先生の教会でした。今とは違い最初は『何がイエス・キリストや』と思っていましたし、何も信じてませんでした」
額田さんが当時の薬物入手の話をしていると、元密売人の信者から「そんときオレに言ってくれれば、安く卸してやったのに」という声が上がり一同大爆笑。こうした際どい会話がほのぼのとした雰囲気のなかでやり取りされ、記者は思わず噴き出してしまった。
人の言うことを聞かないアウトローがなぜ、信心深くなるのか。金沢さんはこう分析する。
「彼らも私ももともと悪かったから、何が正しいことかわからない。じゃあ正しいことは何か?となりますよね。聖書の勉強会ではイエス・キリストの教えを学ぶことで正しいこととは何かを学びます。それは、今までの自分と向き合い、正しい道を歩むことに繋がるのです」
つまり聖書を通じた“カウンセリング”によって、正しい価値観を持つことだと金沢さんは言う。勉強会の雰囲気は断酒会や薬物依存患者たちが行うグループワークという集団カウンセリングに似ているように記者は感じた。
金沢さんもヤクザ時代はあらゆる犯罪に手を染めた。警察の厄介になったことも一度ならずある。だからこそ元アウトローたちの気持ちが痛いほどわかるのだ。
「僕らは“動物人間”やったんですよ。食べたいときに食べて、寝たいときに寝る。やっぱり価値観が変わらんと、無理やろうね。暴排条例は仕方ないと思いますよ。でも、ヤクザの人を追放するだけじゃなくて、足を洗った彼らを生かす道も作ってあげないといけない。受け皿が必要ですよ。僕らはそれを手助けしていくことかな。悩んでる人は、一度キリスト教会に行ってみたらいいですよ」
そして、全員が口を揃えたのは「もう二度とアウトローの生活には戻りたくない」ということだ。
【金沢泰裕氏】
’64 年、大阪府生まれ。18歳でヤクザとなり、背中には見事な龍虎の入れ墨がある。精神的に追いつめられ、28歳で足を洗う。現在は大阪弟子教会担任牧師や大阪府薬物乱用防止員などを務め、元ヤクザや問題を抱えた若者の相談に乗っている。映画『親分はイエス様』のモデルの一人でもある
取材・文/SPA!アウトロー取材班
― 元アウトローたちの新生活【6】 ―
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