辰吉丈一郎が無収入でも引退勧告されても「ボクシングをやめない理由」
当時、史上最速で世界王座を獲得。その後も3度の戴冠を果たしたプロボクサー、辰吉丈一郎。一時は網膜剥離により引退を勧告されたものの劇的KOで復活を果たし、今なお現役ボクサーとしてベルトを追い求め続ける。45歳になった“浪速のジョー”は、なぜ引退しないのか? ボクシングに人生のすべてを賭けた“男の美学”に迫った――
ボクサー・辰吉丈一郎を20年間追いかけたドキュメンタリー映画『ジョーのあした-辰吉丈一郎との20年-』が公開される。ボクシング界の伝説を紡いできた男も、今や45歳。映画では、原則的に37歳とされる日本人ボクサーの“定年”をすぎても現役にこだわる辰吉丈一郎の思いが、インタビューによって引き出されていく。幾度となくぶつけられたであろう「なぜ辞めないのか?」という問いかけ。だからこそ本誌もまた、ストレートな疑問を本人にぶつけてみた。数々の伝説の真相は? 現在の収入は? そしてなぜ、いまだに拳を握り続けるのか? こぼれ落ちた言葉のすべてに、辰吉丈一郎印が刻まれていた。
――20年間の集大成である『ジョーのあした』。試写は見ましたか?
辰吉:はい。でも、自分しか映っていない映画にコメントはしにくいです。僕からしたら、もっと撮るところがあっただろうと思うし「なんでなん?」っていう映画やから(笑)。ただ、20年間も撮影を続けてくれた監督には「飽きもせんとよくぞ!」と感謝したいです。
――映画では等身大の日常を20年間積み重ねることがリアリティを生んでいたと思うのですが、辰吉さんといえば伝説的エピソードが魅力的です。例えば、地元の岡山ではヤンチャで有名だったとか?
辰吉:あの時代は、社会全体がそうやったからね。なめ猫とか横浜銀蝿だとか、ヤンキー文化が全盛期だったんです。だからまぁ、暴走族からバイクをお借りしちゃったとかはあった。当時の暴走族は気合が入ってたから、原付ちゃいますよ? 400㏄のバイクが家に8台あったのかなぁ(笑)。そんな感じやったから、僕が大阪に行くって言い始めたときは近所のおばちゃん連中がめっちゃ喜んだらしいです。「今日はお祝いや。たこ焼きしよう!」言うて(笑)。だから、親父に教わって5歳からボクシングを始めたんですけど、それがなかったらおかしなことになってたと思います。そこまで嫌われることはやっていないけど、時代も自分自身もむちゃくちゃではあったから。
――当時の国内最短記録の8戦目で世界王者となり、その後も伝説をつくります。ところが45歳の今も現役であり引退はしないと。世間からは「もう十分だろ」との声も届いていると思うのですが?
辰吉:まがいものというのか、ひねくれているというのか。……デビューの頃から僕は、普通が嫌やったんですよ。プロテストも普通はC級から受けるんですけどB級からだったし、具志堅さんが9戦目で世界を獲っていたからそれよりも絶対早くチャンピオンになりたかったし。そういう意味では、確かに引退に関しても普通ではないのかもしれない。でも、僕にとっては、ボクシングが生活の一部なんです。
――生活の一部とは?
辰吉:みんなも朝起きると歯を磨くでしょ? それがボクサーだから「走る」が生活の一部で毎日走る。階級ごとに体重制限があって太ってはダメだから、一日1食を続けてるのもそう。朝起きて走って、掃除して、買い物して、夜練習して、帰って、洗濯して、飯作って、風呂入って寝る。極端に言えば、それを365日繰り返すのが日常というか。正直、試合が組めない今の状況はきついんです。でも、何かを引っくり返すためにやっているんだから、練習は一日たりとも休めない。
――では、単刀直入にリアルな話も。辰吉さんがプロのリングに最後に立ったのは’09年。以来、試合は行われてませんが、現在の収入は?
辰吉:まったくない。無収入。
――無収入? 生活は?
辰吉:いうても僕、3回も世界チャンピオンになってますから(笑)。ファイトマネーを無駄遣いしてこなかったし、リングに立って稼いでいるわけではない以上は、貯金をおろして生活するしかないでしょ?
――過去には、数千万単位のCM出演を断ったとの伝説もあります。
辰吉:うん。だって僕、タレントじゃなくてボクサーなんで。ボクサーがCMって違うと思うんで。小銭ならいいですよ? でも、何千万というお金を稼いではダメだと思った。
――後悔は?
辰吉:一切ない。お金ではないけど、WBCというボクシングの団体が殿堂入りの約束をして、4つ目のベルトをくれるという話をいただいたこともあるんです。引退を条件にね。そのお話も丁重にお断りしました。だって、ベルトって恵んでもらうもんじゃないでしょう? ボクサーにとってのベルトは、自分で戦って勝って獲るものでしょ?
※このインタビューは2/23発売の週刊SPA!のインタビュー連載『エッジな人々』から一部抜粋したものです
<取材・文/唐澤和也 撮影/ヤナガワゴーッ!>
ボクサー・辰吉丈一郎を20年間追いかけたドキュメンタリー映画『ジョーのあした-辰吉丈一郎との20年-』が公開される。ボクシング界の伝説を紡いできた男も、今や45歳。映画では、原則的に37歳とされる日本人ボクサーの“定年”をすぎても現役にこだわる辰吉丈一郎の思いが、インタビューによって引き出されていく。幾度となくぶつけられたであろう「なぜ辞めないのか?」という問いかけ。だからこそ本誌もまた、ストレートな疑問を本人にぶつけてみた。数々の伝説の真相は? 現在の収入は? そしてなぜ、いまだに拳を握り続けるのか? こぼれ落ちた言葉のすべてに、辰吉丈一郎印が刻まれていた。
――20年間の集大成である『ジョーのあした』。試写は見ましたか?
辰吉:はい。でも、自分しか映っていない映画にコメントはしにくいです。僕からしたら、もっと撮るところがあっただろうと思うし「なんでなん?」っていう映画やから(笑)。ただ、20年間も撮影を続けてくれた監督には「飽きもせんとよくぞ!」と感謝したいです。
――映画では等身大の日常を20年間積み重ねることがリアリティを生んでいたと思うのですが、辰吉さんといえば伝説的エピソードが魅力的です。例えば、地元の岡山ではヤンチャで有名だったとか?
辰吉:あの時代は、社会全体がそうやったからね。なめ猫とか横浜銀蝿だとか、ヤンキー文化が全盛期だったんです。だからまぁ、暴走族からバイクをお借りしちゃったとかはあった。当時の暴走族は気合が入ってたから、原付ちゃいますよ? 400㏄のバイクが家に8台あったのかなぁ(笑)。そんな感じやったから、僕が大阪に行くって言い始めたときは近所のおばちゃん連中がめっちゃ喜んだらしいです。「今日はお祝いや。たこ焼きしよう!」言うて(笑)。だから、親父に教わって5歳からボクシングを始めたんですけど、それがなかったらおかしなことになってたと思います。そこまで嫌われることはやっていないけど、時代も自分自身もむちゃくちゃではあったから。
――当時の国内最短記録の8戦目で世界王者となり、その後も伝説をつくります。ところが45歳の今も現役であり引退はしないと。世間からは「もう十分だろ」との声も届いていると思うのですが?
辰吉:まがいものというのか、ひねくれているというのか。……デビューの頃から僕は、普通が嫌やったんですよ。プロテストも普通はC級から受けるんですけどB級からだったし、具志堅さんが9戦目で世界を獲っていたからそれよりも絶対早くチャンピオンになりたかったし。そういう意味では、確かに引退に関しても普通ではないのかもしれない。でも、僕にとっては、ボクシングが生活の一部なんです。
――生活の一部とは?
辰吉:みんなも朝起きると歯を磨くでしょ? それがボクサーだから「走る」が生活の一部で毎日走る。階級ごとに体重制限があって太ってはダメだから、一日1食を続けてるのもそう。朝起きて走って、掃除して、買い物して、夜練習して、帰って、洗濯して、飯作って、風呂入って寝る。極端に言えば、それを365日繰り返すのが日常というか。正直、試合が組めない今の状況はきついんです。でも、何かを引っくり返すためにやっているんだから、練習は一日たりとも休めない。
――では、単刀直入にリアルな話も。辰吉さんがプロのリングに最後に立ったのは’09年。以来、試合は行われてませんが、現在の収入は?
辰吉:まったくない。無収入。
――無収入? 生活は?
辰吉:いうても僕、3回も世界チャンピオンになってますから(笑)。ファイトマネーを無駄遣いしてこなかったし、リングに立って稼いでいるわけではない以上は、貯金をおろして生活するしかないでしょ?
――過去には、数千万単位のCM出演を断ったとの伝説もあります。
辰吉:うん。だって僕、タレントじゃなくてボクサーなんで。ボクサーがCMって違うと思うんで。小銭ならいいですよ? でも、何千万というお金を稼いではダメだと思った。
――後悔は?
辰吉:一切ない。お金ではないけど、WBCというボクシングの団体が殿堂入りの約束をして、4つ目のベルトをくれるという話をいただいたこともあるんです。引退を条件にね。そのお話も丁重にお断りしました。だって、ベルトって恵んでもらうもんじゃないでしょう? ボクサーにとってのベルトは、自分で戦って勝って獲るものでしょ?
※このインタビューは2/23発売の週刊SPA!のインタビュー連載『エッジな人々』から一部抜粋したものです
<取材・文/唐澤和也 撮影/ヤナガワゴーッ!>
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