更新日:2022年07月28日 02:26
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熊本城の再建が始まった今、復興途上の熊本地震と日本の危機管理を考える

災害拠点となるべき施設も被害

 東日本大震災では、防災拠点となるべき庁舎が津波により被害を受け、機能喪失に陥ったことは記憶に新しい。宮城県南三陸町役場では、多くの職員が津波の犠牲となった。  熊本地震では、職員がいない夜間の時間帯だったため犠牲者は出なかったが、激しい揺れにより県内の複数の市町村の庁舎が使用停止や倒壊の恐れがあるとして立ち入り禁止となった。  熊本空港はターミナルビルの天井が崩落したため、業務ができなくなり閉鎖された。天井の耐震に問題があり、避難所として使用できなくなった学校の体育館もあった。  医療機関でも、熊本市の防災拠点施設に指定されている熊本市立病院で、天井の一部崩壊などがあり、「倒壊の恐れがある」として使用禁止となり、入院患者約300人が他の病院に転院する事態となった。  本来、庁舎や病院は災害時の防災拠点を担う施設である。施設の機能喪失は、その後の震災対応に大きな支障をきたすことになる。防災拠点となる公共施設・機関の耐震化も急がなければならない。

「非常災害」指定を受けた熊本地震

 安倍政権は熊本地震を「大規模災害復興法に基づく非常災害」に指定した。「非常災害」の指定は国内初のケースとなる。  これにより被災自治体が管理する道路やトンネル、橋などのインフラ復旧工事を国が代行できるようになり、被災地の復旧・復興のスピードを増すことができる。  熊本地震では東日本大震災ほどの大きな混乱は起きなったが、次に巨大災害が起きれば、現在の日本国憲法や災害対策基本法では対応できない問題が出てくることは、東日本大震災の教訓からも明らかなはずである。  例えば、憲法29条で保障されている「個人の財産権」の問題により、瓦礫の処理が遅れ被災者救済の障害となった。国民の権利を制限するという理由から物資の統制が行われなかったため、被災地では救急車などの緊急車両の燃料が不足する事態が起きた。津波被害によって、災害対応の司令塔となる自治体機能が停止した。などなど。

直面する南海トラフと首都直下型地震

 「備えあれば憂いなし」という諺があるが、南海トラフ地震や首都直下地震が起きてからでは手遅れとなる。巨大災害を含めたあらゆる危機に対応できる緊急事態条項を憲法に明記することは、世界の常識であり、国民の生命と暮らしを守るために絶対に必要なことなのだ。巨大災害は私たち日本人を待ってはくれないのだから。 <文/濱口和久> 【濱口和久(はまぐち・かずひさ)】 防災・危機管理教育アドバイザー、拓殖大学地方政治行政研究所客員教授、財団法人防災教育推進協会常務理事。著書に『日本の命運 歴史に学ぶ40の危機管理』(育鵬社)『だれが日本の領土を守るのか?』(たちばな出版)ほか多数。
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日本の命運 歴史に学ぶ40の危機管理

日本史の40の事例が示す、危機を乗り越えるための教訓

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