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DeNA前球団社長・池田純×全日本柔道監督・井上康生、2人のリーダーに共通する考え方「個人の得より社会の徳」

池田あるビジョンをかかげて、そのために何をするべきかの戦略を立て、方向性としかるべき情報を共有する」という池田社長は絶えず社員のモチベーションを上げる努力を怠らなかった。社員は社長から飛んでくるボールを自発的に工夫し、さらに磨きをかけていった。 井上-02世界に勝つためにはどういうことを研究し、現実に何を突きつめていけばいいのかを緻密に考え、行動を起こしていくことが非常に大事」という井上監督の下で選手たちはひとり一人自分の頭で勝つためには何をするべきかを考え、実践に移していった。  池田社長と一緒にベイスターズを盛り上げていった部下も井上監督の下でメダルを目指した選手も、社長や監督の指示通りに、ただ受け身で動くようなことはなかった。二人のリーダーは部下や選手たちを最終的に個人として考え、動くように仕向けたからこそ、大きな成果を上げることができたのだ。  このような因習的な日本型マネジメントとは違う手法を用いれば、それはおのずと常識や伝統に囚われないものになる。 「ただ野球を観に来てくださいというより、ディズニーランドみたいな楽しさもありますよ。映画館に行くような楽しさもありますよ。会社の同僚と美味しいビール飲めますよ。家族で楽しめますよ……といったエンターティメントの要素とスポーツを融合させたところに新しいマーケットをつくった」という池田社長も、選手たちに「柔道という枠のなかだけで小さな世界を見るのではなく、大きな世界を見せて、こういうこともある、ああいうこともあるという可能性を求めさせた」という井上監督も、業界に慣例や伝統的なしきたりがマイナスなものだと判断すれば、それをスルーしたり、あえて壊すようなことをやった。 談笑

自分の「得」よりも社会の「徳」が大事

 だが、この二人のマネジメントを何よりも際立たせているものは、自分の「得」をいつも捨てられる準備ができていることではないだろうか。 「得でなく、徳が大事ということをいつも胸に収めている」という池田氏の言葉はまさしくそのことを表していると思う。ベイスターズを離れた池田氏はJリーグの特任理事に就任し、今後他のスポーツにも関わっていく予定だという。 「いろいろなスポーツがもっと楽しめる国になれば、日本は楽しい国になるじゃないですか。一時のブームをつくるのではなく、しっかり根の生えたスポーツ文化をつくっていきたい」という池田氏。片や、「勝った負けただけの世界では柔道は衰退していく。そうではなく、柔道ってすごいな、かっこいいな、面白いなといってもらえる競技にしていきたい。そして人々に感動や生きていく力を与えられる、社会的価値のあるものといわれ続けたい」という井上監督。  二人とも自分の「得」より、社会の「徳」に軸足を置いているのだ。志が高いのである。  それゆえに彼らのゴールは無限の先にある。そんなゴールを目指す新しいタイプのリーダーたちが、彼らの後にたくさんいることを信じたい。制度疲労を起こし、袋小路に入りかかっている日本の社会に風穴を開け、人々に喜びと希望を与える「新しい空気」を持続的につくり出す力を彼らはきっと持っているはずだから。 <取材・文/日刊SPA!取材班>
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