歌舞伎町の裏DVD店が摘発でゼロに…“裏ビデオロス”に陥るマニアの心境
とはいえ、あまりにも派手に販売していたため、お上も黙っているはずがない。木本さんは何度か逮捕された経験もある。それでも裏ビデオ店に足しげく通い、コレクション棚に新作を並べては満足感に浸る生活を何十年も過ごした。そんな木本さんも、孫がいてもおかしくない年齢。さらにこの数年、特にインターネットの台頭以降、木本さんは“裏ビデオ業界”が衰退していくのを肌で感じた。
「裏ビデオから裏DVDになってね、画質はいいし、女優さんも昔よりずっと綺麗で若くてね。でもね……なんかこう、作品と呼べるものが少なくなった気がするんだよ。これはオレが年老いたってのもあるのかな。裏ビデオなんかインターネットで簡単に見られるじゃない? ポッと見てサッと抜いて、終わり。ビデオを買いにいく、ってなるとさ、そりゃもう変装したりカネ下ろしたりして、ドキドキしながら店に入るの。そこで吟味に吟味を重ねてさ、紙袋に入ったブツを抱えて、股間を膨らませて自宅まで急いで帰るの(笑)。もうドキドキしながら再生ボタン押してね『騙された!』ってこともあれば、テープが擦り切れて2本目を買うレベルの作品もあってね……。ネットだと、そういうのないじゃない?」
――でもまあ、違法ですからね。ダメなもんはダメなんですよ。
裏ビデオをノスタルジックに語る木本さんに、思わずこう呟いてしまった筆者。木本さんの言う通り、小・中学生の時分には、確かにエロ本を買ったり借りたりして、ドキドキしながら自宅に持ち帰ったし、小遣いを貯めてやっと購入したエロビデオが、完全にパッケージ詐欺で悔し涙を流した経験もある。今はすべて「ネットでポン!」だ。便利で素晴らしいと感じる反面、あの時のような情熱や感激は、確かにない。
「もう歌舞伎町に来ることもないかもしれませんね……」
そういって踵を返し、新宿駅方面に向かう木本さん。違法だろうがなんだろうが、木本さんにとっては「文化」とも言えた歴史が、終わりを告げた瞬間だった。
<取材・文/森原ドンタコス>
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