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温泉はなぜ体にいいのか? 『ホンマでっか!?TV』出演の医学博士が解説

温泉の熱で“細胞そのもの”が若返る

温泉 近年の研究により、温泉の熱が“細胞そのもの”を若返らせる可能性があることもわかってきました。2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞した京都大学の山中伸弥教授が発表したiPS細胞をはじめ、特定の刺激を与えることで細胞を若返らせ、万能細胞にするといった研究がさかんになっていますが、こうした研究により、温泉の持つ新たな可能性が見出されたのです。  すでにわかっている現象として、細胞に熱刺激を与えると「ヒートショックプロテイン」というタンパク質が生成されます。ヒートショックプロテインは、通常の温度環境のときには休眠状態にあるタンパク質が、43度以下の温度域で加温されると生成されるもので、ストレスによって異常を起こした細胞を修復してくれるのです。  あらかじめ熱でヒートショックプロテインを生成しておけば、紫外線やアルコールといった様々なストレスに対する耐性になり、身体の免疫力や抵抗力を高めてくれます。  免疫力や抵抗力が向上することで、がんや老人性肺炎、ウイルス感染などの感染症予防が期待できますし、老化につながるストレスへの耐性もつくことから、アンチエイジングにも期待できそうです。実際、ヒートショックプロテイン遺伝子が誘導されると、「リプログラミング」と呼ばれる細胞の若返り現象が起きる可能性が示唆されています。  このように顕著な健康メリットが期待されるヒートショックプロテインを活発にするには、何をおいても身体を温めることが重要です。ヒートショックプロテインによる免疫力は、体温が1度上がるごとに5~6倍に上がり、反対に下がると30%減になると言われていますから。  なお、日常生活や仕事で肉体を使っている人であれば、筋肉に刺激が加えられヒートショックプロテインも自然と増加すると考えられます。ところが、現代のようにほとんど体を動かさない生活を続けていると、ヒートショックプロテインが生成されず、免疫力や抵抗力が低下してしまいますので、温泉や毎日の入浴で身体を温める習慣を意識的にもつことが必要でしょう。  ちなみに、研究ではシャワー浴ではヒートショックプロテインの量的変化はほとんどなかったとのことですから、免疫力や抵抗力アップを得るためには、やはり全身浴で身体をしっかり温める必要があるようです。  ただし、人によってはあまりに熱いお風呂に入ると湯あたりなどの温泉事故を引き起こす可能性もあり、特に体温が37.5度を超える高熱になると温泉事故のリスクが16倍にまで増えてしまいます。したがって、あくまで自らの体調に照らし、適度な温度の入浴を楽しみながらじっくりと免疫力を上げる習慣を身につけてください。 【一石 英一郎】 1965年、兵庫県生まれ。医学博士。国際医療福祉大学病院内科学教授。日本内科学会の指導医として医療現場の最前線を牽引する一方、伝統医療と西洋医療との知見の融合にも造詣が深い。温泉入浴指導員の資格も有するなど、温泉を活用した健康増進にも精通する
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