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野村周平のたばこ、りゅうちぇるのタトゥー程度で叩かれる監視社会が息苦しい

「人に迷惑」?別にかけてないでしょ

 確かに、タトゥーが市民権を得ているとは言い難いし、受動喫煙による健康被害を過小評価すべきでもない。  しかし、タトゥーを入れたりタバコを吸ったりする行為は、いまのところ法律で禁止されているわけではない。ただの趣味や嗜好の話なのだ。この点も押さえなければ、バランスを欠いてしまうのではないだろうか。  りゅうちぇるは“みんなタトゥー入れよう!”と言っているわけでもなければ、野村も煙たそうにしている人の隣で“タバコうめぇー”と言っているわけでもない。ただ彼らのライフスタイルの中で、各人の責任においてやっていることだ。  たとえば、野村のインスタグラムを見る限り、とても両脇の知人が副流煙を嫌がるタイプには思えない。だとすれば、写真のシチュエーションで喫煙したとしても何の問題もなさそうなものだが…。  そんな条件は無視で、「人に迷惑がかかる」だとか、「SNSでそういうことは書かないほうがいい」だとか善人ぶって、イメージダウンを心配したフリまでしてみせるのが、実にせせこましいのだ。  筆者には、タトゥーを入れた親が子どもを悲しませる可能性よりも、“善良な”市民による監視社会が招く悲劇のほうがよほど気がかりだ。
純平、考え直せ

野村周平は映画『純平、考え直せ』(9月22日公開)で歌舞伎町のチンピラを演じる。くわえたばこ似合ってます ©2018「純平、考え直せ」フィルムパートナーズ

違法だと叩く、合法でも叩く

 このように法が認める権利に鈍感でありながら、一方では法にどっぷりと依存し、根拠を求めるのも“善良な”市民の特徴だ。これは、犯罪や失敗をおかした人間を徹底的に排除する姿勢にあらわれる。  薬物で逮捕された有名人への反応が分かりやすいだろう。執行猶予付きの判決が言い渡されると、必ず“甘い”と言って厳罰を求めるからだ。当然ながら、“甘い”と判断する法的、科学的根拠はどこにもない。  これもタトゥーやタバコへのヒステリックな反応の裏返しと見るべきなのだろう。結局は着実な正義を望んでいるのではなく、雑味を取り除きたいだけなのではないだろうか?  ひとつひとつ誤解を解きほぐすように、真摯な長文を連投する“ザッツ雑味”なキャラのりゅうちぇる。このいびつさを笑えないあたりが、現代のつらさなのかもしれない。<文/石黒隆之>
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。Twitter: @TakayukiIshigu4
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