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会社の「ストレスチェック義務化」が発達障害に気づく人を増やしている!?

 昨年から大きな話題になっている「大人の発達障害」。テレビや本などで発達障害に関する情報が発信されたことにより「自分もそうかもしれない」と気づく人が増えている。 発達障害 ただそれだけではなく、発達障害がここまで認知されだした要因には、3年前から始まった「ストレスチェックの義務化」も関係しているという。「ストレスチェック」は、業務上の心理的な負担を数値化し「今、心身ともに疲れてはいないか」「人間関係は潤滑であるか」などを調べるためのもので、従業員50人以上の企業には実施が義務付けられている。これまで企業から依頼を受けて、のべ300~400人のカウンセリングを行ってきた一般社団法人ヒューマンサービス/精神保健福祉士・原朋子さんが話す。  「労働者の方がストレスチェックの結果によって『高ストレス』と選定され『面接指導を受ける必要がある』と実施者が認めた場合、希望者に対して私たちは面接指導を実施しています。そういった面接を受けた方々は仕事や人間関係について悩んでいる方が多く、なかには発達障害の傾向と見られる方が少なくないのです。  発達障害の傾向が見られる方や、その当事者と一緒に働く人からの相談を含めると相談数の約2~3割を占めています。なかには『発達障害ですよね?』と、直接的な質問をする相談者もいますが、それを診断できるのは医師のみなので、私たちカウンセラーは『発達障害かもしれない』、『発達障害とは思えない』など、判断を促す言葉も避けなければいけません。  そこで、できる限り当事者やその上司、同僚など関係者から事例をうかがい、できる限り当事者の希望に添って事業所の環境を整えるなどの支援ができるよう努めています」  しかし、発達障害及びグレーゾーンの特性は重度から軽度まで百人百様だ。複雑な特性の理解を得るには難しく、本人や関係者への説明は容易ではない。 「食欲がない、眠れないなどの身体的な症状があれば通院を促しやすいですが、発達障害の特性は明確でないことも多い。『なぜか仕事がうまくいかない』『なぜかコミュニケーションに支障が出る』といった漠然とした不安を抱えている方が多いため、「発達障害」と直接的な言葉を使わずに当事者や関係者に理解を促すことは非常に難しいのです」  さらに難しいのが、発達障害によるメンタル不調者は、当事者だけの問題に留まらないケースがあるということだ。 「高ストレス者のカウンセリングをしていると『同僚や部下、あるいは上司が発達障害なのではないか?』というご相談を受けるケースも増えています。当事者だけでなく、当事者により周囲の人間が大きなストレスを抱えてしまっている場合もある。  ある企業では、発達障害と見られる方がいることで同じ部署の方々がストレス過多になってしまい、当事者を他部署へ異動することで環境調整を整える事例もありました。当事者には発達障害傾向にある事に自覚が無かったため、納得できない異動に辛い思いをしていることが想像できました。このような問題を事前に解決するためにも、当事者の方にはできる限り自身の特性に気づいていただき、そして周囲の方々には、特性を正しく理解を頂けるよう注力しています」
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発達障害に関して固定観念を持つ人が多い
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発達障害グレーゾーン

徹底した当事者取材! 発達障害の認知が広まるなかで増える「グレーゾーン」に迫る

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