「ADHDは手柄横取り」「ASDは異臭を放ってもおかまいなし」職場心理術の新刊が物議。「職場での“誤った診断ごっこ”に繋がるだけでは」当事者会代表も懸念
2025年4月24日に三笠書房から発売予定の『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』(神田裕子著)に、発売前にも関わらず、目次やイラストが差別的だと批判が殺到中だ。主にASD(自閉症スペクトラム障害)やADHD(注意欠如・多動症)など発達障害の当事者・支援者・医療関係者が中心となり、不買運動の様相を呈してきた。
批判に対し、著者の神田裕子氏は「私が診断することはできないが、ASD的な行動として、感覚過敏から何日もお風呂に入らない人がいる。すべてのASDにあてはまるわけではないが、周りを困らせている人もいるので、背景事情を説明している。そして(風呂に入らない当事者から)机を離すなど環境調整をする、といった対応についても触れています」、「私の中に差別意識は全くありません。家族に発達障害の傾向があり、私自身の中にもASD、ADHD的な部分、鬱病や愛着障害の芽がある。病気として出ていないだけ。私自身も生きづらさを感じてきました」と、まいどなニュースの取材 で、差別的意図を否定した。
同書は、 “職場の「困った人」”たちを6タイプに分類し、“戦わずして勝つためのテクニック”を紹介するといった内容だ。「簡易版 タイプ診断チャート」も収録されている。
神田氏は『カサンドラ・ラボ』を主宰する心理・産業カウンセラーだ。発達障害のパートナーや同僚を持つ人々へのカウンセリングを通じて、職場や家庭での摩擦軽減を目指している。自らを『スーパーカウンセラー』と称し、SNSで積極的に情報発信を行っている。
目次は、以下のようなものだ。
●あなたの周りの「困った人」はどのタイプ?
タイプ1 こだわり強めの過集中さん ≫≫ ASDタイプ
タイプ2 天真爛漫なひらめきダッシュさん ≫≫ ADHDタイプ
タイプ3 愛情不足のかまってさん ≫≫ 愛着障害タイプ
タイプ4 心に傷を抱えた敏感さん ≫≫ トラウマ障害タイプ
タイプ5 変化に対応できない価値観迷子さん ≫≫ 世代ギャップタイプ
タイプ6 頑張りすぎて心が疲れたおやすみさん ≫≫ 疾患タイプ
ASDタイプはナマケモノ、ADHDタイプはバナナを片手に持ったサル、トラウマ障害は羊と、動物で描かれている。差別、偏見、分断を助長するとし、発達障害当事者協会や日本自閉症協会が声明を出している。Xでは、「#神田裕子著作の出版差し止めを求めます」とのハッシュタグが拡散され、オンライン署名で出版差し止めを求める動きも出てきている。
自身も発達障害当事者で、中高年発達障害当事者の会「みどる」を主宰し、延べ2,000人の発達障害者の相談に乗ってきた、代表理事の山瀬健治さん(59歳)に話を聞いた。

『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』(神田裕子著 三笠書房)
著者は差別的意図を否定
問題の目次『あなたの周りの「困った人」6タイプ』

『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』(神田裕子著 三笠書房)より
立教大学卒経済学部経営学科卒。「あいである広場」の編集長兼ライターとして、主に介護・障害福祉・医療・少数民族など、社会的マイノリティの当事者・支援者の取材記事を執筆。現在、介護・福祉メディアで連載や集英社オンラインに寄稿している。X(旧ツイッター):@Thepowerofdive1
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