必見!2009[ヒットしなかった陰の名作]アワード【書籍部門】
【書籍】
“エロス”を芸術の域にまで引き上げたのはこの本!
【間室道子さん】
青山ブックセンター六本木店に勤めるカリスマ書店員。『つむじ風食堂』(筑摩書房)のPOPがそのまま書籍の帯になるなど、手書きPOPの名手として、出版界で注目を集めている
http://www.aoyamabc.co.jp/
★金賞
『I ♥秘宝館』』
(監修・酒井竜次/八画出版部)
絶滅寸前となっている”エロの見世物小屋”=「秘宝館」にスポットを当てた本。「今はネットでエロをいくらでも見られるけど、どんどん陰湿になってますよね。秘宝館は、個人が私財を投げうって真剣にやっているのが素晴らしい。本になって本当に良かった」
★銀賞
『女中譚』
(著・中島京子/朝日新聞出版)
田山花袋の『布団』を、視点を変えて描いたトリビュート小説『FUTON』でデビューした作者の新作。「林芙美子、吉屋信子、永井荷風の名作を、作品にチラっと出てくる女中さんたちの目から見たらどうなるか。『家政婦は見た』的な視点から描かれてます」
『南極1号伝説』
(著・高月 靖/文春文庫)
切実な需要があるのに、蔑まれる「ダッチワイフ」の歴史と開発に迫った作品。「ユーザーと対話しつつ、軽量化の問題などを乗り越えていく熱い開発話には素直に感動してしまいます」
『ロボットとは何か 人の心を映す鏡』
(石黒 浩/講談社現代新書)
天才研究者が、ロボット開発によって、人間の感情にもう一度スポットをあてている。「自分とソックリのロボットが家にくる時代はすぐそこ。そのときのために読んでおきたいです」
『Twitter小説集 140字の物語』
(著・内藤みか、円城塔ほか/ディスカヴァー)
急速に広がるtwitterで、人気作家10人が140字のストーリーを紡いだ。「SFあり時代小説ありで、クオリティは玉石混淆だけれども、140字だからこその輝きに注目してください」
「今年売れたのは、警察小説。それから、村上春樹さんや大沢在昌さん、今野敏さんなど、作家生活30周年の人たちも元気でしたね」と話すのは、青山ブックセンターのカリスマ書店員・間室道子さん。
1年間に約8万冊が生まれるなかでSPA!読者に是非モノの本は?
「巻頭グラビアを都築響一さんが担当した『I ♥秘宝館』。彼が追求している『最もアンダーなところから最も純粋なものが生まれる』というテーマの1つで、消えゆくものに光を当てています」
また、『南極1号伝説』と『ロボットとは何か』は、ともに”プロジェクトX”的な開発話でありながら、表裏一体の関係性にあるのがミソ。
「非常に繊細な問題を抱えて作られているダッチワイフと人型ロボット。開発者として同じく苦労し、同じく蔑まれつつ、それでも両者の間には深い溝があるのも興味深いです」
ところで、名作なのにヒットしない本の理由は……?
「一極集中型になっているせいかも。『1位を読んでおけば安心』という人が多い。今年流行した”家電芸人”の話に頼りきるのと同じで、書籍も不況のせいで『失敗したくない』と思う人が多い。まずは”自分の本当の好み”を探すことが、面白い本探しの第一歩だと思いますよ」
― 必見!2009[ヒットしなかった陰の名作]アワード【2】 ―
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