仕事

台風15号で“自分は社畜”と痛感した人たち「漠然と出社しなきゃと思っていた」

そもそも出社する必要があったのか疑問

 東京都中野区に住む会社員の佐々木敦夫さん(仮名・30代)は、勤務先までは地下鉄通勤。台風の余波をほとんど受けなかったということで通常通りに出社した。だが……。 「うちは物流関係なんで、トラックの運行状況を確認するのに手一杯。他の社員が来られなかったりして、安全確認など数人で馬車馬のように働きました。我が社の取引先のトラックが千葉県内で風で煽られ横転したりして……。結局それで、ものすごい大赤字が出たし、そもそも我が社も取引先も、全部休みにするって決断していればよかったはず。この日はトラックの被害状況や安否確認で翌朝まで帰れず、です。そもそも全てをストップしていれば、こんな作業もいらなかったはず」(佐々木さん)  神奈川県藤沢市在住の会社員・杉浦邦彦さん(仮名・40代)も、朝7時半に家を出て、会社についたのは正午を回った頃だった。 「駅に着いたら長蛇の列。電車はいつ動くかわからないらしく、アナウンスすらない。それでもみんな並んでいるんです。会社に電話したところ『無理なら来なくていい』と。それで部署のグループチャットを見てみると、時間はわからないが出社可能、という同僚や部下のコメントで溢れかえっていました。正気か? と思いました。みな会社に行くことで何かアピールをしたいのか、俺は仕事がしたい、そう主張したいのか? でも私も、その流れに逆らうことはできず、5時間以上かけて出社しました」(杉浦さん、以下同)  上司から「よく来たな、えらい」といわれて部下も杉浦さんもなぜか喜んでしまった。これが評価につながる、とでも思ったのだろうか。  結局この日は仕事にならず、午後4時ごろから連れ立って酒を飲みに行ったというのだから、そもそも出社する必要があったのか疑わしいとも話す。 「一年前、大阪に台風が直撃した時は公共交通機関が全てストップしましたよね。あれくらいのことをなぜ関東はやれないのか? 日本の首都だから? 経済が麻痺するから? 誰も言えないんじゃないでしょうか? 無駄になってもいいから根性見せろ、みたいな。これ、働き方改革とは逆行していますよね……」<取材・文/山口準>
新聞、週刊誌、実話誌、テレビなどで経験を積んだ記者。社会問題やニュースの裏側などをネットメディアに寄稿する。
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