許せない無断キャンセル、悪質なケースも
キャンセルには悪質なケースもあるようで…
――お客はどんな理由で無断キャンセルをするケースが多いんですかね?
小山:単に「うっかり」もありますし、何店舗か予約しておいて候補からはずれたお店にキャンセルの連絡をしないという場合もありますね。昔からあるケースとしてはデートや接待などで、前もっていくつかのお店を予約しておいて、シチュエーションや流れによってそのうちひとつのお店に来店して他がキャンセルになるというものですね。他に、悪意のあるものも増えてきていますが。
――どんなケースでしょうか?
小山:グルメサイトなどでは予約をして来店したら、ポイントが付与されるところが多くあります。もちろんキャンセルすればそのポイントは消滅するのですが、キャンセルされたことをお店側が都度自分で登録処理する必要があります。
――無断キャンセルでバタバタしているときに、それは手間ですね。
小山:なので、キャンセル処理が漏れてしまうこともあり得るようです。そうなると、実際には利用していないのにポイントだけ獲得できてしまうことになる可能性があります。
――なるほど。それは悪質ですね…
小山:事前決済をすればそのリスクは回避できますが、自分が予約する側の気持ちになると、忘年会の参加者全員分も含めて先に決済するようなことは面倒ですよね。
――確かにそうですね。そうすると結果的に間口が狭まってしまいますね。
小山:そうですね。また、ここにはカードの不正利用問題もついてきますので、事前決済はオススメしていません。お店としては、予約の前日にリマインドの電話をかけたりはしているようなのですが、全てのお店でそれができるわけではありませんね。
無断キャンセルを「逃げ得」にはしない(画像出典:photoAC)
――店舗が月々に支払う保証料と、実際に被害が出た時にお店が受け取れる金額はどのくらいですか?
小山:契約内容によってバラバラですが、7名以上~50名程度の予約が無断キャンセルになった場合でも保証でカバーさせていただくプランが人気です。この場合、1店舗1ヶ月あたり4,000円前後の保証料を頂戴する形になり、お店はこれで事実上無断キャンセルの被害の心配をしなくてよくなります。
――お店の心配はそれで無くなると思いますが、無断キャンセルをした側が逃げ得になるんではないですか?
小山:私どもがお店に保証金をお支払すると、民法上、弊社がお店に代わって無断キャンセル者に請求をかけられるようになります。飲食店は「お客様とお店」という関係上、強く請求できないのが実情です。また、そのコミュニケーションも煩雑だったり億劫にもなりますし、なにより営業の邪魔になりますよね。その部分も弊社が代わって行うことになるので、お店にとってもメリットですし、無断キャンセルした人が「逃げ得」になるということは決してありません。
――保証額を支払う場合、キャンセル事実の証明なども大変かと思いますが、どういった仕組みで、支払いが決定するんですか?
小山:基本的には性善説のうえに成り立っていますね。もちろん、申請をいただくためのフォーマットはありますし、申請いただいた内容については都度審査もしていますが。
――最後に、今後の展望をお聞かせください。
小山:現在はお話しした通り、発生した無断キャンセルに対する保証を行なっています。しかし、本来であれば無断キャンセルが発生しないことが一番大事ですよね。近い未来、私どもが持っているあらゆるテクノロジーを使って無断キャンセルが発生しにくい仕組みというものを、展開していく予定です。
――この取り組みは、志と情熱のあるお店が、無断キャンセルによって潰されたり苦しんだりすることを避けられる。そうなれば私たちは、もっとたくさんの才能に溢れたお店に出会えるに違いない。<取材・文/Mr.tsubaking 撮影/鈴木大喜>
Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。