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「自分らしい仕事」をしたがる20代への対処法

本音で語り合う――素晴らしい、と思う。が、こと職場においては“建前”が無用な軋轢を避け、仕事を円滑に進める潤滑油ともなるのも事実。上司⇔部下の会話に隠れる本音を酌みつつ、言わぬが花が大人のコミュニケーションだとも思うのだ

◆「僕がやるんですか?」20代のイラッとする発言に本音はあるのか?

「この仕事、僕がやるんですか?」「もっと自分らしい仕事がしたいんです」……。

20代のイラッとする発言 20代若者から聞かれるこれらの発言にイラッとした覚えのある人もいるだろう。そんな彼らの言葉の裏にも、実は隠れた本音があるのでは?と思いきや「ほとんどが本音ですよ」とコーチングの専門家播摩早苗氏。冒頭の言葉に真意があるとしても、「自分らしい仕事をしたい」≒「面倒な仕事はイヤ」、「僕、褒められないと伸びないんです」≒「僕を褒めないあなたの指導が悪い」だとか。

「ここ2~3年の新入社員に顕著なんですが、上下の関係性に不慣れなんです。ストレートにモノを言えばそれが通じた世代で、“自分軸”が許されてきた。一方で、友達からの排除を極端に恐れてきているので、表面的な会話はうまくても自己主張ができない。上司や先輩に対しても、空気を読んでいるつもりで場違いなことを言ってしまうんです」

 部下を育て生かす上司力を提唱する人材育成のプロ・前川孝雄氏も同様の指摘をする。

「若い人は本音を自分軸に置いて『自分のやりたい仕事をやろう』と考えますが、上司は組織軸を重視して『責任のある仕事を任せたい』と考える。そこでズレが生じるわけです。そこで建前的にでも組織軸を受け入れれば、人は成長する。『自分のしたい仕事しかしない』と自己防衛すると、成長のチャンスも逃してしまう」

 そして一方の上司側もまた、「『仕事の意義』を見いだしてあげることが重要」と前川氏。

「サラリーマンの給料は20年間上がっておらず、仕事は大変になるばかり。若者は社内の昇進に働く意義を見いだせません。『仕事を頑張っても意味がない』と思っている人さえいます。なので、例えば、『褒められないと伸びない』と言われたら、褒めるところがまったくなかったと感じても、将来の期待を伝えてあげる。『こんな仕事では成長できない』と言うならば、その仕事の意義を丁寧に説明することが大切です」

「そこまで!?」というのが、ある世代以上の正直な思いだろう。が、「関係性を維持する努力が求められている」と社会心理学者渡部氏は指摘する。

「これまでの日本は終身雇用によって外から持続的な関係性を与えられていた。しかし、その制度は壊れ、会社を辞めること自体のコストは下がり、イヤになればすぐに組織から離脱することができる。今は社員たちの長く安定した関係性を維持するために、努力や投資をする必要があるんです」

 そこで、「建前」というわけだ。

「アンケートをとると、20代の若い世代の9割が『仕事を頑張りたい』『コミュニケーションをとっていきたい』と回答しています。人間自体がそんなに大きく変わったわけではなく、コミュニケーションの形が変わっただけ。その作法が違うだけなんですよ」(社会心理学者・渡部 幹氏)

 ゆとりがっ!と非難しているだけでは何も変わらない。「建前は部下の成長のための投資」(同)。リターンを期待しつつ、まずは褒めることから始めてみようか。そんなオレこそ褒めてもらいたいという本音は押し隠しつつ。

【播摩早苗氏】
フレックスコミュニケーション代表
各種社員研修、セミナーを設計、運営するコーチングの専門家。近著に『えっ、ボクがやるんですか?』(幻冬舎)。5月に同テーマの管理職版をPHP研究所から刊行予定

【渡部 幹氏】
社会心理学者
北海道大学助手、京都大学助教等を経て現在、早稲田大学高等研究所招聘研究員。社会制度や組織の維持・変容を司る心理的基盤について研究。共著に『不機嫌な職場』(講談社)

【前川孝雄氏】
FeelWorks代表取締役
『リクナビ』編集長などを歴任後、リクルートを退社。人材育成・組織活性化コンサルティングに従事。青山学院大学兼任講師も務める。最新刊『働く人のルール』(明日香出版)

取材・文/昌谷大介(A4Studio)田山奈津子 古澤誠一郎 鈴木靖子(本誌) イラスト/StudioCUBE.
― 上司×部下[本音⇔建前]翻訳辞典【8】 ―

えっ、ボクがやるんですか?

現代っ子部下の“トリセツ”




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