相撲界の怪しいカネの流れに怒り
貴闘力チャンネルで、私が最も驚いた内容だったのは、現在大阪の老人ホームに住む、
2代目若乃花の元間垣親方を訪ねた動画だ。ハンサム力士で売った横綱だったがすっかり痩せてしまって、昔の面影は無い。にも関わらず怒りに身体を震わせながら、尾車親方に怒りをぶつける。
この動画で最も私が驚いた事は
相撲界独特の「お茶屋さん」と言うシステムだった。観客にお弁当などのお土産を提供する商売である。お茶屋さんが提供する「お土産」には、値段がついていない。それが裏金作りに役に立っているという。
相撲業界の人間が裏金を作る方法は、要するに「ダフ屋行為」であるらしい。優勝を決める一番の最前列の席などは、100万円単位の金を払ってでも欲しがる人がいると言う。また相撲には
「維持員席」と言うものがある。それは言うなれば「永久予約席」であり、個人が所有する、ひと場所通しの席の権利である。それを所有者の承諾なしに、現役の中川親方がひと席200万円で売っていると、元間垣親方は告発する。そして維持員席の責任者が尾車親方だと言う。そうしたダフ屋行為で得た金を、「値段がついてないもの」を売るお茶屋さんを通す事によって、いわばマネーロンダリングがすることが、
大相撲の「甘い汁」を吸う仕組みらしい。北の湖と大鵬が、泣きながら元間垣親方に「お茶屋をつぶしてほしい」と頼んだと言う。
そこで私が疑問に思う事は「お茶屋さんって一体誰がやっているんだ?」ということだ。そんなおいしい利権にどうやれば、どんな立場の人が食い込める?
2018年に宝島社から出版された「貴の乱 日馬富士暴行事件の真相と日本相撲協会の「権力闘争」」と言う本を読むと、貴闘力のYouTubeチャンネルとは真逆の印象を持つ。つまり北の湖、貴乃花の側に問題があったように感じられる。
大相撲と言う伏魔殿において、誰が正義か見極めるのは難しい。
ただ尾車親方が、他人に相当恨みを買う手法で権力闘争を戦った事は間違いないようだ。追い落としたメンバーは、大鵬、北の湖、貴乃花と一代年寄りのスーパースターばかりである。2018年に貴乃花が協会を辞めたことにより、権力闘争は完全に終焉した。しかし、相撲協会にできた「禍根」はくすぶり続けるのではないか。
計算高い尾車親方も、まさか
YouTubeと言う「窮鼠猫を噛む」メディアが脚光浴びる時代が来ることまでは、予想できなかっただろう。命をかけて YouTubeで、相撲界の暴露を行うことに、貴闘力は罪滅ぼしの気持ちがあるのかもしれない。貴闘力の言葉を信じるならば、彼のおっちょこちょいのせいで、大横綱たちが立場を悪くしたのだから。貴闘力は自分のチャンネルを
「自分が抹殺されないためにも、なるべく多くの人に見て欲しいと」冗談めかして言う。貴闘力の身の安全の為にも、皆さん貴闘力チャンネルを見てあげてください(笑)。
1968年生まれ。構成作家。『電気グルーヴのオールナイトニッポン』をはじめ『ピエール瀧のしょんないTV』などを担当。週刊SPA!にて読者投稿コーナー『バカはサイレンで泣く』、KAMINOGEにて『自己投影観戦記~できれば強くなりたかった~』を連載中。ツイッター
@mo_shiina