日テレ新番組「THEパニックGP」から見える“テレビから消えない芸人”の特徴
文/椎名基樹
この4月から始まったバラエティー番組「開演まで30秒!THEパニックGP」(日本テレビ)は、全く既視感がない内容で、その新しさに感心した。
「大喜利即興コント番組」とでも言ったら良いだろうか? 芸人が6人一組の2チームに分かれて、提示されたお題に沿ったコントを即興で披露する。番組タイトルにもあるように、お題が発表されてからたったの30秒でコントを披露しなければならない。
ユニークなのは、お題によってコントの演者の人数が「1人〜6人」の中から指定されることだ。例えば、1人で「10秒で万歩計億越え男」、2人で「そんな文春のかわし方あるん?」、チーム6人全員で「財布を拾った。天使と悪魔とさらにあと二人登場」など。
そしてもう一つ、おもしろいルールが、ステージ上に幕を下ろすためのボタンが設置されていて、それを押す担当もチーム内から選ばれる。1番おもしろくなるタイミングで、コントを終了させる大切な役目である。
この番組の素晴らしいところは「スベリ芸」が自然と成立しているところだ。M-1をはじめとする舞台ネタのコンペティションや「IPPONグランプリ」など、現在人気となっているスポーツ化されたお笑い番組は「スベリ芸」は容認されない。スベったらただ悲惨なだけだ。
あまりにも、お笑い番組のスポーツ化が進みすぎると、だんだん何を目的に番組を見ているのかわからなくなってくる。笑うために見ていたはずが、いつの間にか、ただお笑い評論家になっている自分がいる。
一番の大爆笑は、「スベリ芸」の中にあると思う。上島竜平、出川哲朗、古くは林家三平などレジェンド級の芸人はもちろん、ジミー大西やクロちゃんなど「飛び道具」の芸人たちも、その内に入ると思う。
また、「スベリ芸」という言葉は、適切ではないのかもしれないが、追い込まれた末に出てくる“やけっぱちなパフォーマンス”こそが、大爆笑をもたらすものだ。「THEパニックGP」は、番組タイトルが示す通り、むちゃぶりすることが基本なので、スベることも致し方なしという空気と、チーム対決というスポーツ要素が両立しているところがおもしろいし、新しい。
スベリ芸が容認される日テレ新番組の魅力
スベリ芸が大爆笑をもたらす
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1968年生まれ。構成作家。『電気グルーヴのオールナイトニッポン』をはじめ『ピエール瀧のしょんないTV』などを担当。週刊SPA!にて読者投稿コーナー『バカはサイレンで泣く』、KAMINOGEにて『自己投影観戦記~できれば強くなりたかった~』を連載中。ツイッター @mo_shiina
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