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伊集院光の「スタッフ公開処刑」はアリ? ラジオの生放送でやらなくても

なぜ、ラジオで公開処刑したのか?

「誤爆投稿」は、すぐに削除されたが、伊集院光はそれをスクショして保存した。そしてこの一件には一切触れずに腹に貯めておいて、「深夜の馬鹿力」で一気に件のスタッフを告発した。彼が、そうした行動を選んだ理由は「解決法は、忘れるとか直接ケンカするとか皆さんあると思いますが、僕の中でできるのは一個だけ。僕が今までこういうことで報われた、これで全部わだかまりがなくなったことは、このラジオでしゃべって笑いが起こる、ネタになるならもうそれでいい」と思ったからだと言う。しかし、笑いのネタになったことで、このスタッフが「わだかまりなく」仕事に戻れるとはとても思えない。伊集院光だけが、いくらか精神衛生を良くしたというだけだろう。

 私は、伊集院光が、この一件をラジオで話したことに驚く。仕事仲間の無礼を、公共の電波を私物化し、実名を名指しで告発したのだ(※)。自分のパワハラぶりを、世間に公開しているだけだ。放送を聴くと伊集院光は、自分が理不尽な仕打ちを受けたように、この一件を捉えている節がある。しかし、伊集院光を被害者と捉える人は少ないだろう。普通の人の感覚だと「ここまで言われるなんて、いったい日常的にスタッフに対してどんな態度をとってんの?」と思うだろう。 (※編集部注:3月8日放送回では、誤爆投稿したであろうADの実名を公表していたが、番組終了後に別人であることが判明。実際は、同じLINEグループの同姓の別のスタッフがやったことだったと3月15日放送回で訂正された)

スタッフは面倒だったろうなぁ

 この一件の発端となった、歌詞資料の件にしても、スタッフが非常に理不尽な思いをしただろうことが想像できる。台本などは、手直しできるように、ワード形式である必要があるが、歌詞は書き込む必要がないと考え、PDF方式で問題ないとスタッフは判断したのだろう。伊集院光は放送の中で、簡単に「コピペでもいいからワード形式でくれ」と言っていたが、ネットの歌詞は基本的にコピペができない。もしかしたら最終的にスタッフは歌詞をタイピングしたのかもしれない。そうだとしたら、面倒だったろうなぁ。大体歌詞くらい自分で検索するべきだ。それなのに、自分のために資料を作ってくれた人間を「アメが甘く感じる」(笑)ほど叱責するなんて。  些細な出来事が大惨事になってしまう。それがホラー映画の唯一の構造だ。すべてのホラー映画がこの構造に当てはまる。メールの誤爆は、もっとも誰にでも起こりうる「日常のホラー」の入り口である。最後に宛先を指差し確認。それが現代人の最も身に付けるべき習慣かもしれない。
1968年生まれ。構成作家。『電気グルーヴのオールナイトニッポン』をはじめ『ピエール瀧のしょんないTV』などを担当。週刊SPA!にて読者投稿コーナー『バカはサイレンで泣く』、KAMINOGEにて『自己投影観戦記~できれば強くなりたかった~』を連載中。ツイッター @mo_shiina
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