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「1日も早く接種したい」自治体のワクチン便宜問題、混乱の序章か

「私たちが“ズルして先行接種している”と思われている」

「男性は、予約の電話をかけたが一向に繋がらないので直接きた、とおっしゃっていました。同じような方も複数いらっしゃいましたが、こちらとしては『申し訳ない』と謝るしかありません」(女性職員)  こうした勘違い組のほとんども、説明さえすれば渋々理解してもらえたのだが、執拗に食い下がる人もいた。 「カネを払えば受けさせてくれるのかとか、自治体の職員はこっそり受けているのだろうとか……。一番すごかったのは、子供のように叫びながらやってきて、今すぐワクチンを打ってくれと泣いていた女性です。ワクチンを打ってくれないのなら自死する、と言っていて、流石に警察に通報しましたが、どうにか自分だけは助かりたい、私たちがズルして先行接種している、といったお考えの方は、実は結構いらっしゃるのではないかと思います」(女性職員)

「どれだけ説明してもご理解いただけない」

 パニックがパニックを呼び、コロナがあろうがなかろうが、関係のないような二次被害、三次被害も出ているのだから笑えない。民間の医療施設でワクチン接種を行うロードマップを提示した福岡県内のクリニックにも、やはりパニックの波が押し寄せている。 「ワクチンの優先接種の対象でない方から、中国製でもいいからワクチンを打ちたいとか、予約料や手数料を払うからワクチンを早く打ちたいとか、そういう問い合わせが若干増えたとは聞いています」  土田昌子さん(仮名・50代)は「闇ワクチンがある」と考える層がこのタイミングで増加の傾向にあると感じているそうだが、今年初め、日本国内の富裕層が中国製ワクチンを秘密裏に接種しているという報道が決定的な契機だったと振り返る。 「医師に現金入りの封筒を渡して、ワクチンのいち早い接種をお願いする患者さんは、私どもがお断りをすると、今度はワクチンを早く打てるという詐欺メールに引っかかってしまい、今度はその患者のご家族が『なんとかワクチンを打って』とお願いに来られたほど。どれだけ説明してもご理解いただけないのが苦しいです」(土田さん)
コロナワクチン接種詐欺注意喚起

画像は、消費者庁「コロナワクチン接種詐欺注意喚起」

 ワクチン接種をめぐる「狂想曲」は、今始まったばかり。さらに大きな騒動に発展しないことを祈るばかりだ。<取材・文/森原ドンタコス>
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