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社内に取り残された非正規スタッフ達。デルタ株感染拡大でひろがる「格差」

社内に取り残された非正規スタッフ達

派遣社員 東京都内の建設会社に派遣社員として勤務する森田晶子さん(仮名・30代)も、同じような悩みを訴える。 「派遣先は大企業で、派遣社員でも職域接種ができると言っていますが、私は元々週に2~3度しか派遣元企業に出社しておらず、後回しにされている状態。なのに、派遣先企業の人事担当者からは『未接種者の出社は控えてほしい』と遠回しに要求されていて、どうしようもありません」(森田さん、以下同)  そして、森田さんが一番感じているのは、今感染が急拡大している「デルタ株」については、大企業がとてつもない危機感を抱いている、ということだ。 「私もリモート対応できる仕事ではないため、今もワクチン未接種の状態で出社していますが、会社はデルタ株をかなり危険視しているのか、出社している従業員数がガクッと減りました。  社内の食堂や喫煙所は全て閉鎖され、今も出社せざるを得ない非正規スタッフが、がらんとした会社で仕事をしています。なんか、“取り残された”感がありますよね」

出勤して「雑用をこなすしかない」派遣社員

 都内のIT関連企業に常駐する派遣社員の中田綾子さん(20代・仮名)も似たような境遇だ。普段は社内外の人達で賑わっていたフロアも、現在は「家では気分が乗らない」という口実で出社した気まぐれな正社員が数名いるだけ。「さすがにデルタ株は怖い」ということでほとんどの社員がリモート勤務に切り替えていた。  そんななか、中田さんは毎日欠かさず出勤して雑務をこなす。ひっきりなしにかかってくる問い合わせの電話に対応し、配送業者から届いた荷物を仕分ける。 「私も未接種なので、本音を言えば出勤したくないんですが、仕方ないとも思っています。みなさん(正社員)のように何かスキルがあるわけではないので、(出勤して)雑用をこなすしかないんです」(中田さん)  中田さんは、どこか諦めたような笑みを浮かべる。  ワクチン接種済みの正社員らがリモート勤務するなかで、ワクチン未接種のまま出社せざるを得ないという「格差」。  ワクチンにまつわるデマや陰謀論は数あれど、こうした現実があるにもかかわらず「ワクチンを上級国民が独占している」というような話が生まれてこないのが、むしろ不思議でならないが、「接種したくてもできない人」を減らさない限り、混乱の連鎖が続くだけだ。 <取材・文/山口準>
新聞、週刊誌、実話誌、テレビなどで経験を積んだ記者。社会問題やニュースの裏側などをネットメディアに寄稿する。
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